コーポレート・ガバナンスニュース(2020/10/5)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

  1. 取締役のスキル、マトリクスで紹介 多様性の確認促す
  2. 納得できる役員報酬へさらなる開示を

※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します

 

1. 取締役のスキル、マトリクスで紹介 多様性の確認促す

【注目ポイント(記事一部引用)】
上場企業が取締役の専門性やスキルをマトリクス図で紹介する動きが広がっている。企業統治(コーポレートガバナンス)の強化を目指し、女性や外国人などダイバーシティ(多様性)への配慮や全体としてバランスのとれた運営が求められているからだ。

【コメント】
記事の中では、取締役に求める要件を示す「スキルマトリックス」の開示について各社の取り組みを取り上げています。スキルマトリックスの作成・開示に関する支援は弊社でも今年数社ご支援を行いましたが、企業側の必要性は年々高まっているように感じます。背景には、社外取締役の人数が増えてきたこともあり、改めて取締役に何を求めるかを整理しなければならないと企業側が考え始めていること、もう一つは、取締役会の場自体を「報告や承認」を中心とした場から「将来に向けた事業戦略や懸案事項についての議論を行う」場へと変えていきたいという経営者側の要望があると考えています。特に後者の文脈に沿って、取締役の要件を考えると、あくまでどのような取締役会を目指すかが最初にあり、その上で、スキルマトリックスで整理される、「どのような要件を備えた人材で構成されるべきか」が続いて検討されるべきです。いきなり取締役の要件から考え始める企業が意外と多いのですが、まずは、取締役会をチームとしてみなし、そのチームの方向性を定めた上で、構成メンバーを検討するという手順を踏むことが大事だと思います。

 

参考記事

「チームとしての取締役会」の構成を考える

 

2. 納得できる役員報酬へさらなる開示を

【注目ポイント(記事一部引用)】
企業の役員が受け取る報酬は公正な評価で決まり、株主など外部からみて納得できるものでなければならない。コロナ禍で事業環境が厳しさを増すなかではなおさらだ。お手盛りを避けるためにも、報酬の中身をつまびらかにする開示の充実が欠かせない。

【コメント】
役員報酬を巡っては会社法改正などの影響もあり、その開示内容が強化されたものの先日こちらの記事で取り上げた通り、まだまだ道半ばというのが実情です。中長期的には、積極的に情報開示を行っている企業ほど株式市場で高い評価を得られるような状態になることが本来は望ましいのですが、まずは報酬決定に関する実態の報告義務を強化することが効果的だと思います。例えば、報酬委員会を設けている企業は東証1部上場企業で既に6割を超えています(以下、参考記事を参照)が、その活動実態は各社各様で様々です。この活動内容を情報開示対象に含めるまたは強化するのはどうでしょうか。年間の開催回数、開催時間数、主な議題、委員からの主な意見・・・など出来る限り、具体的な取り組み内容が推察できるような情報の開示が強化されることで、企業側は通り一遍のような情報開示はできなくなります。また、このように情報開示を強化すること自体が、結果的に企業側の役員報酬に対する意識を高め、より実効性のある役員報酬を目指すことにもつながると考えます。

 

参考記事

<解説>独立社外取締役の選任状況と指名・報酬委員会の設置状況(2020年8月時点)