コーポレート・ガバナンスニュース(2020/9/15)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

  1. 役員報酬開示、なお限定的  ルール改定1年半 企業、詳細な記載で差
  2. 米アパレル・小売り企業トップの報酬ランキング 首位は「ナイキ」CEOの56億円

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1.役員報酬開示、なお限定的  ルール改定1年半 企業、詳細な記載で差

【注目ポイント(記事一部引用)】
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の高額報酬約91億円を有価証券報告書に記さなかったとして起訴された元代表取締役グレッグ・ケリー被告の初公判が15日、開かれる。事件の背後に役員報酬の開示範囲が狭い制度問題があった。改正で範囲が広がり拡充する企業は増えたが差が大きい。情報は海外よりなお限られ、ガバナンス(企業統治)の実効性が課題だ。

【コメント】
海外企業のAnnual Reportをみていると役員報酬に関する開示情報だけで数10ページ以上を超えるというのは決して珍しくありません。報酬項目ごとの割合や業績連動報酬の仕組みに留まらず、会社として役員報酬の在り方を示す「報酬哲学」を数ページにわたって記している企業もあります。コーポレートガバナンスに関する支援をしている立場としては、このあたりの情報開示について会社としてどこまで積極的に行うべきと考えているかが、形式的な取り組みに留まるか、本質的な改革に進めるかの試金石のように思えます。筆者が支援している企業は幸いなことに後者の企業のケースが多いのですが、全般的には出来る限り情報をオープンにしたくないという企業も少なくありません。現在の上場企業において、投資家・株主に対して自社の取組みをアピールし、評価してもらうことはもはや必須です。その上で、情報開示をせずに投資家に評価をしてもらうことなどあり得ないという当たり前すぎる事実を理解していれば、こうした不毛な情報の出し渋りということも本来は減るのですが…。

 

 

2.米アパレル・小売り企業トップの報酬ランキング 首位は「ナイキ」CEOの56億円

【注目ポイント(記事一部引用)】
欧米企業の経営陣は莫大な報酬を受け取っていることが多いが、ファッション業界も例外ではない。米「WWD」の調査によるアパレルやビューティ、小売業界を代表する35社を対象とした高額所得者リストを紹介する。

【コメント】
記事の元になっている、米国の役員報酬コンサルティング会社が発表しているCEO報酬の中央値は、約13億とのことです。CEOの報酬の多寡によって、その他の役員や従業員給与の水準も影響を受けることから、特に人材の流動性が高い国・業界ほど、CEO報酬も高く設定される傾向にあります。日本においても現時点では一部の企業に留まりますが、10億円以上の高額報酬を付与する企業が出てきましたが、役員報酬の高額化の傾向については、今後も続きます。やがては、メルカリやLINEなど一部の企業では、従業員に対する株式報酬の付与も積極的に取り組んでいますが、人材獲得競争の激しい企業ではこうしたことも今後増えるでしょう。