「チームとしての取締役会」の構成を考える

1週間ほど前の記事ですが、日経新聞に取締役会構成に関する以下の記事が掲載されました。

取締役の専門や経験ひと目で キリン・電通ら一覧表

取締役候補の専門知識や経験を一覧表にまとめた「スキルマトリックス」を株主総会の招集通知に掲載する企業が増えている。12月期決算企業ではキリンホールディングス(HD)や資生堂電通グループ、クボタなどが2020年から載せた。財務や事業戦略など取締役に期待する能力を分かりやすく示し、取締役会での議論や株主との対話の活性化を狙う。

日本経済新聞 2020年4月20日

スキルマトリックスは海外の上場企業のProxy Statement等で、よく見かけます。ここ最近では日本企業も株主招集通知やIR資料等で開示する例が増えています。例えば、荏原製作所では、同社のHPで取締役のスキルマトリックスを以下のように掲載しています。

出所:荏原製作所HP(https://www.ebara.co.jp/about/ir/Governance/composition/index.html

ここで荏原製作所の秀逸なところは、表の上部にあるように「当社が取締役候補者に特に期待する分野」としてスキルマトリックスを掲げているところです。あくまでポイントは一般論ではなく「当社にとって」という点です。

当然のことながら、会社によって取締役会をどのような場にしていくかは異なります。昨日の記事でも出てきたシスコのような取締役会では、今後の経営の方向性や事業の成長戦略について侃々諤々議論する場として取締役会を位置付けるでしょう。一方で、どことは言いませんが、ここ数年不祥事を連発しながら迷走している日本の某企業のように、ガバナンス不全で不祥事が相次いでいる場合には、守りの面を重視したチェック&コンプライアンス型の取締役会を目指すかもしれません。

つまり、まずは取締役会のあるべき姿を検討することが先決です。そのうえで、個々の取締役に何を求めるかという順番で検討していくことになります。このとき、どのようなメンバーを揃えると効果的かを併せて検討していきますので、取締役会の構成を考えるというのは、チーム編成と同じです(そのため、スキルや経験だけでなく、実際には相性も含めて検討することになるでしょう)。

日本企業が取締役のスキルマトリックスを掲げはじめている点は高く評価すべきです。さらに欲を言えば、どのような取締役会を目指すかについても是非言及してもらいたいと思います。まだ聞いたことはありませんが、株主総会の場で、取締役会のあるべき姿について株主から質問が出たりすると、こうした議論は一気に加速するでしょう。