コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/26)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

  1. 米アップルのクック氏に約295億円相当の株式報酬か
  2. コロワイド、大戸屋HDへのTOB延長

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1.米アップルのクック氏に約295億円相当の株式報酬か

【注目ポイント(記事一部引用)】
米アップルの株価急騰で、ティム・クック最高経営責任者(CEO)の株式報酬は再び高額となったもようだ。
クック氏は24日に56万株を受け取る予定だったが、21日の終値で計算すると2億7860万ドル(約295億円)相当。故スティーブ・ジョブズ前CEOの後任に9年前に就任して以降、株式報酬を毎年支給されている。

【コメント】
コロナ禍で多くの企業が業績悪化に苦しむのとは対照的に、AppleやAmazonなどのハイテク企業の好調振りは留まるところがないようです。Appleがが7月に発表した4-6月(第3四半期)決算が、売上高が同四半期で過去最高となっており、時価総額も先週時点で2兆ドルを突破したとのことです。こうした極めて好調であり、短期と中長期、両方の業績結果が注目される企業のCEOの役員報酬には、経営上のインセンティブとしてどのような効能が求められるでしょうか。先日、こちらの記事でテスラのイーロンマスクが2200億円相当のストックオプションの権利を得たと報じられました。テスラのようにイノベーションの実現にとことん拘り、中長期の企業価値を大幅に向上させることを最大の目的とする(あえて、短期業績には拘らない)場合には、固定報酬は極めて少なく、後は全てストックオプション(極めてハードルの高い時価総額を達成した場合に行使可能)で構成されるような「アップ・サイド」のみのインセンティブ設計がなされている報酬が適しています。一方で、中長期の企業価値だけでなく、四半期や通期などの短期での「利益の確保」も同時に求められる場合には、短期業績結果で変動する業績連動報酬(STI)と中長期の企業価値向上に寄与する(LTI)の両方を備えている必要があります。加えて、ストックオプションのように「アップ・サイド」のインセンティブだけでなく、株価の下落リスクという「ダウン・サイド」を防止することへのインセンティブ設計も備えた現物株式の付与などが効果的です。Appleのティム・クックの報酬構成をみると固定現金報酬(Base Salary)と短期業績連動報酬(STI)に中長期の株式報酬(LTI)を加えた構成となっており、株式報酬も譲渡制限付株式となっていることから、先の要件を満たした設計となっていることがわかります。

 

2.コロワイド、大戸屋HDへのTOB延長

【注目ポイント(記事一部引用)】
外食大手のコロワイドは25日、定食店を運営する大戸屋ホールディングスに対して実施しているTOB(株式公開買い付け)の条件を変更すると発表した。25日が最終日だった期限を9月8日まで延長する。成立に必要な応募数も引き下げることで、成立を目指す。

【コメント】
コロワイドによる大戸屋への敵対的TOBの期間が昨日終了の予定でしたが、応募状況が想定を下回ったとのことで9月8日まで延長されました。また、それに伴いTOB成立要件の下限を45%から40%へと下げています。元々、コロワイドが既に大戸屋株の20%を持つ筆頭株主であり、大戸屋の株主構成の6割が個人株主が占めることから、プレミアムを乗せたTOB条件の成立はほぼ間違いないというのが、大方の見立てでした。そのため、想定以上に多くの個人株主が大戸屋支持に集まったことにはなります。ただし、大戸屋としては最後の抵抗に向けた猶予期間は確保できたものの、今回のTOBの成立要件の緩和によって、依然厳しい状況であることには変わりありません。