コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/27)

本日は、以下の記事について取り上げます。

  1. JDI会長「2年以内黒字化」に意欲 株主総会、いちご追加支援を可決

※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します

 

1.JDI会長「2年以内黒字化」に意欲 株主総会、いちご追加支援を可決

【注目ポイント(記事一部引用)】
ジャパンディスプレイ(JDI)は26日、株主総会を開き、独立系投資顧問会社のいちごアセットマネジメントからの追加出資受け入れなどを決議した。JDIは6期連続で最終赤字が続くが、スコット・キャロン会長は「2年以内に進捗を示す」として黒字化への意志を示した。経営再建に加え企業統治(コーポレートガバナンス)の強化と、息の長い改革が求められている。

【コメント】
JDIが東証に対して提出している改善報告書をみると、コーポレートガバナンスの機能不全の具体的な内容として「コーポレートガバナンス・コードで求められる取締役会の役割・責務を十分に果せていなかったこと」を挙げ、さらに「大株主の不透明な形での影響により自律的な意思決定が阻害されていた」とし、JDIの大株主である旧産業革新機構(INCJ)の存在が不当にJDIのガバナンスを歪めていたことを指摘しています。

たとえば、「人材開発委員会および財務委員会という任意の機関が設置され、その決議方法が全会一致とされていたため、当該大株主から派遣された取締役(両委員会の委員を兼任)が反対すれば、重要な人事および財務事項について取締役会に上程することができなかった」とあるように、人事や財務といった会社にとっての重要テーマもINCJの顔色を窺いながら行わざるをえなかった状況が見受けられます。

こうした反省を受けて、より健全なコーポレートガバナンスの実現を目指し、社外取締役の機能発揮を促しやすい指名委員会等設置会社へ移行するということなのですが、実際に今回の機関設計だけではJDIのコーポレートガバナンスの強化が必ず実現できるとはいえません。

ガバナンスの難しいところは、制度的・プロセス的なテーマでありながら、その機能を実現するためにはガバナンスに関わる当事者(代表的には取締役会や取締役個々人およびそれを支える取締役事務局機能など)の能力や役割を果たそうとする意思に依る部分が大きいことです。そのため、単に外形的に社外取締役の影響力が高まる機関設計にしたところで、必ずしも期待通りに社外取締役が役割を果たせるかはまた別物です。

このことは、過去指名委員会等設置会社の形態を取りながら、ガバナンス不全が原因で不祥事を起こした企業が国内外問わず多数あることからもわかりますし、だからこそ、経産省が「社外取締役の在り方に関する実務指針」を策定したことにも繋がります。

JDIが今回の総会で決意表明したコーポレートガバナンスの強化を実現できるかどうかは、どのような取締役会を実現するべきか、そのために一人ひとりの取締役が必要な役割をどこまで果たせるか、(そもそも)そうした役割に担うための適任者が取締役として選任されているかにかかっています。

 

関連記事

指名委員会等設置会社に移行すれば不祥事は防げるのか

<解説・前編>社外取締役の在り方に関する実務指針

<解説・後編>社外取締役の在り方に関する実務指針