コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/25)

本日は、以下の3つの記事について取り上げます。

  1. スピンオフを有効活用しよう
  2. 米サード・ポイント、ソニー株なお保有
  3. 選任賛成率、異例の「57.96%」 物言う株主に悩まされる東芝・車谷社長のかじ取り

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1.スピンオフを有効活用しよう

【注目ポイント(記事一部引用)】
コロナ禍による事業環境の変化によって、企業には迅速な選択と集中が求められている。事業を外部に切り出す際は、欧米で普及している「スピンオフ(分離・独立)」を有効に活用したい。

【コメント】
多くの企業で改めて事業の選択と集中が求められており、今後益々事業ポートフォリオの見直しは進むことが予想されます。政府もこうした現状を踏まえ、7月31日には経産省が事業再編実務指針を公表するに至りました。取締役会での中長期の戦略の検討の際には、当然こうした事業の絞り込みは議論の俎上に上るため、取締役会のメンバー構成としても複数事業のポートフォリオを管理した経験がある経営者や専門家が求められます。取締役会のスキルマトリックスでも今後こうした経験・専門性は重視されるようになる可能性があります。

 

2.米サード・ポイント、ソニー株なお保有

【注目ポイント(記事一部引用)】
ソニーに事業改革の提案を繰り返してきた米投資ファンド、サード・ポイントは24日までに、ソニー株の一部を保有していると明らかにした。米証券取引委員会(SEC)への報告書で6月末までに米預託証券(ADR)をすべて売却したと明らかにしたが、これとは別に東京証券取引所の上場株を持つ。ソニーに対して引き続き積極的な対話を続けていく可能性が高い。

【コメント】
先日こちらの記事で、サードポイントがソニー株を売却したと伝えられていましたが、実際には未だに一部を保有しているとのことです。今後も引き続きソニーに関わり続けることの証左でもあると思います。一度狙った獲物は簡単には逃がさないということなのかもしれませんが、ソニーの何がアクティビストを強く惹きつけるのでしょうか?サードポイントは過去一貫して、手を変え品を変え、ソニーに対して事業ポートフォリオの見直しを要求していますが、コングロマリットディスカウントの解消余地であれば他の日本企業にも同様のことはいえます。サードポイントが果たして今後どのような要求をしてくるのか、気になるところです。

 

3.選任賛成率、異例の「57.96%」 物言う株主に悩まされる東芝・車谷社長のかじ取り

【注目ポイント(記事一部引用)】
不正会計や米原発子会社の巨額損失による経営危機からの再起を図る東芝が、外資系投資ファンドとの攻防を繰り広げている。
2020年7月31日の定時株主総会は何とか乗り切ったが、車谷暢昭(のぶあき)社長兼最高経営責任者(CEO)の取締役選任賛成は過半数を辛うじて上回るにとどまった。ファンド側も一定の支持を集めたことから、今後も厳しい経営のかじ取りを強いられそうだ。

【コメント】
東芝の車谷CEOの取締役選任の賛成率が、何度か当ブログでも取り上げてきましたが、今回の記事では、東証上場主要500社のうち2020年1~6月の株主総会で取締役選任議案への賛成率が最も低かった経営トップを下回る賛成率であることが指摘されています。記事の中で、市場関係者の「事実上の不信任」とする声が紹介されているように、東芝にとっては株主総会を経ても一安心とはいかず、厳しい状況が続くはずです。ところでコーポレートガバナンスコードでは、社長・CEOの選任だけでなく解任基準についても定め、定期的に社長・CEOの評価を行いながら適切なタイミングでの交代についても求められています。今回、事実上CEOが不信任を得たという評価が市場関係者の中で広がってくると、次期社長・CEOの後継者計画を取締役会が監督する中で、オプションとしては社長・CEOの交代も現実味を帯びてきます。現段階では、もちろん上記は可能性に過ぎませんが、東芝を巡る状況として特に以前から指摘されている今後の事業成長の期待が、思った以上の成果が出なかった場合には、事態が急変する可能性は十分あり得ます。