コーポレート・ガバナンスニュース(2020/7/24)

本日は、以下の4つの記事について取り上げます。

  1. イーロン・マスク氏の2回目となる約2200億円ストックオプション獲得、取締役会の承認待ち
  2. 戸田建設、西松建設…アクティビストが狙う建設株、旧村上ファンド系も警戒
  3. 東芝総会、筆頭株主エフィッシモ推薦の取締役候補「勝算は十分ある」
  4. レオパレス社長ら9人の続投承認 株主総会で業績悪化を陳謝

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1.イーロン・マスク氏の2回目となる約2200億円ストックオプション獲得、取締役会の承認待ち

【注目ポイント(記事一部引用)】
米国時間7月21日、Teslaは4カ月続いた高値の後、直近6カ月の平均時価総額が1500億ドル(約16兆円)を超え、理論的にCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏の数十億ドル(数千億円)価値の権利確定オプションは解除された。
Reutersが最初に報じたように、Teslaが直近6カ月間時価総額1500億ドルを達成すると、マスク氏は2018年の株主総会で承認された前代未聞の報酬パッケージ12分割の2回目を手にする権利を得る。

【コメント】
まさに桁違いの報酬ですが、イノベーションの実現こそが会社の持続的成長に直結するテクノロジー企業では、こうした究極の成果報酬が、経営者に対するインセンティブとなり、株主利益にも適うでしょう。テスラ以外にもGAFA各社のCEOを含む経営幹部の報酬は、そのほとんどが株価関連の経営指標(たとえば、対競合比のTSRなど)と連動する株式報酬で占められています。

 

2.戸田建設、西松建設…アクティビストが狙う建設株、旧村上ファンド系も警戒

【注目ポイント(記事一部引用)】
ゼネコンが恐れる機関投資家はどこなのか。
複数の外資系ファンドが日本の建設業をターゲットにしている。例えば、英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは建設株をいろいろ保有し、昨年時点で準大手ゼネコンの戸田建設の株式13.10%を取得。米ダルトン・インベストメンツは今年4月、空調や給水、排水設備を手掛ける大成温調の株式7.22%を取得している。
それでも、「外資系のアクティビストよりも、国内の方が権利の主張が強くて怖い」と準大手ゼネコン幹部は警戒する。

【コメント】
ゼネコンは、一般的にクライアントである施主からの依頼などで、有力株式を多数保有している企業が少なくなく、またこれまでは東京五輪による建設ラッシュで業績好調でした。一方で、経営体質は古く、横並び意識は依然強いままということもあり、経営改善やガバナンス改善などの余地も豊富にあるのが特徴です。つまり、保有資産は優良かつ豊富、さらに磨けば光るとアクティビストの格好の標的とされています。既に幾つかのゼネコンでは、アクティビストの要求による自社株買いや取締役構成の見直しなども行われています。元々横並び意識が高い業界のため、良くも悪くも今後同じようなことが、他の企業にも一気に進むと予想しています。

 

3.東芝総会、筆頭株主エフィッシモ推薦の取締役候補「勝算は十分ある」

【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝が31日に開催する定時株主総会を前に、物言う株主らの動きが活発になっている。同社の筆頭株主であるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが推薦する社外取締役候補者2人は、「勝算は十分ある」とし、機関投資家らへの働き掛けを強めている。

【コメント】
今回の東芝の取締役選任を巡る、会社側とエフィッシモ側の主張は、子会社の不正取引を防止できなかった取締役会の責任を両社が認める点では一致しているものの、今後の対応方針が大きく異なります。「(原則)現在の取締役体制の下、ガバナンスとコンプライアンスの強化を図りたい」会社側と「不祥事を防止できなかった現取締役体制では不十分であり、体制の強化を図るべき」とするエフィッシモ側の主張は、どちらも一理あります。それだけに、他の株主からするとどちらに賛同すべきか、迷うのではないでしょうか。両者ともに票読みは行っているはずですが、仮に拮抗していた場合、エフィッシモ側が推す取締役候補者3名のうち全員は難しいとしても少なくとも1名が選ばれる可能性は十分あります。その場合は、実質的に東芝の取締役会へのエフィッシモの影響力は増すことにつながります。

 

4.レオパレス社長ら9人の続投承認 株主総会で業績悪化を陳謝

【注目ポイント(記事一部引用)】
賃貸アパート大手のレオパレス21は22日、東京都内の本社で定時株主総会を開いた。施工不良問題により2020年3月期連結決算で802億円の最終損失を計上し、債務超過寸前に陥った。宮尾文也社長が冒頭で「大幅な赤字決算となり、大変な心配を掛けた」と陳謝し、経営再建に向けた方策を株主に説明した。宮尾氏ら取締役9人が会社提案の通り選任され、総会は終了した。

【コメント】
今年1月頃、会社側と取締役選任を巡って激しく対立した大株主のアクティビストファンド「レノ」ですが、今回の株主総会では特に株主提案を行うこともありませんでした。一部報道では、家電量販店大手のヤマダ電機がレオパレスの買収に乗り出すとも伝えられており、水面下でそうした可能性が高まっているのであれば、レノ側の沈黙も納得がいきます。