コーポレート・ガバナンスニュース(2021/2/15)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.日本製鉄、情実ガバナンスと決別 東京製綱へ敵対的TOB

2.五輪組織委、会長後任の選考を本格化

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1.日本製鉄、情実ガバナンスと決別 東京製綱へ敵対的TOB

【注目ポイント(記事一部引用)】
株式買い付け総額24億円のディールが、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の転換点として資本市場の関係者に注目されている。日本製鉄が1月21日に表明したワイヤロープなどを手掛ける東京製綱へのTOB(株式公開買い付け)だ。日鉄と東京製綱は株式を持ち合う関係だが、日鉄が東京製綱の業績やガバナンスの改善を求めて、TOBに踏み切った。財界に人材を輩出する「日本株式会社」の象徴ともみられる日鉄。過去に買収防衛を目的に率先して株式持ち合いをしていた日鉄の変身に驚きの声が上がっている。

【コメント】
長文ですが、非常に読み応えのある記事です。本件の行方はどうなるかわかりませんが、日本製鉄が敵対的TOBに踏み切った理由の一つとしてガバナンス不全を挙げている点は今後、他の日本企業にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

特に「低迷する業績をよそに、企業価値向上への貢献を理由に会長と社長を選任し続ける人事・報酬委員会に対しては「完全に機能不全に陥っていると言わざるを得ない」と断罪する。」と記事中にあるとおり、業績が低迷している企業において、社長や業務執行取締役への評価や選任に対して目立った改善がみられない企業は、今後同様の批判を浴びせられる場面が出てくるはずです。

取締役会だけでなく指名・報酬委員会における取組みの中身について、今後ますます注目が集まると考えられます。

 

2.五輪組織委、会長後任の選考を本格化

【注目ポイント(記事一部引用)】
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、会長職の辞任を表明した森喜朗氏の後任人事を15日から本格化する。アスリート出身者らの理事を中心に構成した「候補者検討委員会」(委員長・御手洗冨士夫名誉会長)で後任候補の選考を進め、早ければ週内にも新トップを決定する。

【コメント】
東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会の後任会長選出問題に関しては、思わぬ展開から有力候補者が辞退する運びとなり、改めて「候補者検討委員会」が設置され検討されることとなりました。

前任者が後任者を指名するという、これまでの日本の社内で当然視されていた、トップ選任プロセスが「不透明さと適正さを欠いている」として批判され、多くの国民もそのことに納得しているということは、ガバナンス上のトップ選任に関して、今後プラスの影響が期待できると思います。

現時点でも東証1部上場企業のうち、4割弱の企業は指名委員会や報酬委員会を未設置です。しかし、今回のことを契機に設置に動く企業は益々増えるでしょう。また、指名委員会や報酬委員会を設置するだけではなく、その中でどのような議論がなされ、意思決定されているかが、何より重要であるということも、今後益々注目されるようになると思われます。

今回の問題を契機に、トップの選任に関する世間の反応の厳しさを感じ、背筋を伸ばした経営者は決して少なくないかもしれませんが、一方で日本企業におけるガバナンス改革としては、今後の追い風になる出来事だったように思います。