コーポレート・ガバナンスニュース(2020/10/18)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

1.物言う株主の要求、コロナでも活発 20年は過去最多22件

2.役員賠償保険 関心高く

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1.物言う株主の要求、コロナでも活発 20年は過去最多22件

【注目ポイント(記事一部引用)】
アクティビスト(物言う株主)による日本企業への要求や提案が増えている。2020年は年間ベースの過去最多を上回る22件に達した。取締役の受け入れや株主還元の強化、買収価格の見直しなどを企業に迫る例が目立つ。コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革を進める日本に照準を定めるファンドが増え、新型コロナウイルス禍で活動が鈍った欧米市場と差が鮮明になっている。

【コメント】
先日の記事
でも取り上げましたが、来年の株主総会を見据えてちょうど今の時期にピークとなるアクティビストの株式取得活動が活発化しています。

記事によると、既に今年の日本企業へのアクティビスト活動の件数は、昨年を上回っており、米国に次ぐ高水準であり、イギリスやドイツを上回るとのことです。

これだけ日本企業が注目を集める理由は、アクティビスト活動が企業の乗っ取り行為としてみなされ、その理由の如何にかかわらず、日本社会全体でアクティビストを排除してきた従来と比べると、そうした傾向が薄まってきたことが考えられます。そのため、他国では普通に行われている(通常レベルの)アクティビスト活動が、日本でも増えてきたということでしょう。

世界的にもアクティビスト活動は活発化していますが、日本企業は特に収益性が低く、事業ポートフォリオの組み換えやコーポレートガバナンス面の取り組み強化による成長余地が見込めるため、投資対象としてのポテンシャルは高いようにみえます。

引き続き、アクティビストによる株主総会でのガバナンス関連の提案は増えるでしょう。特に社外取締役の選任を巡っては株主と会社の意見対立の場面は増えてくると予想します。

 

参考記事

コロナ危機下の今、アクティビストはどう動くか

 

 

2.役員賠償保険 関心高く

【注目ポイント(記事一部引用)】
関西電力の金品受領問題で、会社法違反容疑などで市民団体が提出していた告発状を大阪地検特捜部が受理した。旧経営陣に対しては、関電や株主から損害賠償を求める訴訟も起きている。関心が集まるのが、役員の賠償金や裁判費用をまかなう「会社役員賠償責任保険」。ただ、刑事事件で有罪になると役員には保険金が支払われなくなる。

【コメント】
役員賠償保険は経営陣だけでなく社外取締役もその対象とすることが一般的です。有力な社外取締役の候補者ほど同時に複数企業から就任の依頼を受けることも珍しくないため、役員賠償保険の充実度がその就任の受諾に寄与することもあり得ます(もちろん、それだけで就任を決断している訳ではないと思いますが)。

少し前の記事ですが、以下の記事では役員賠償保険が充実されることで経営者や取締役の責任を曖昧にするリスクに触れています。

役員賠償保険が急拡大 訴訟に備え

過去を振り返っても、東芝や関西電力などのように、社外取締役がいながら本来の役割を果たせず、結果的に大きな不祥事に繋がる事態を招いたケースが存在します。

保険で賠償責任が免除されるということが、経営陣や取締役が本来の役割を全うしないことに繋がらないように、何らかの形で経営陣や取締役の役割を観察し、本人にフィードバックする、それでも改善が見込まれなければ退任を迫ることが、ガバナンスの実行上必要となります。

たとえば、役員の選解任を巡って、毎年取締役会や指名委員会できちんと議論する、毎年の取締役会の実効性評価などで個々の役員が本来の役割を果たしているかどうかを評価する、こうしたことは上記の有効な手立ての1つとなり得るでしょう。

別の言い方をすると、役員の選解任の検討や取締役会の実効性評価を実施しているフリをしている企業(形式的に取り組んでいる企業)は、経営陣や取締役が本来の役割を果たしているかどうかをチェックする貴重な機会を自ら捨てているに等しいともいえます。