コロナ危機下の今、アクティビストはどう動くか

新型コロナウイルスの影響により、未曽有の経済危機に陥る可能性を指摘する声が高まっています。

今後、規模の大小を問わず、経営者はいざというときに備えて支出を減らし、なるべく手元の現預金を厚めに確保しておくマインドが強まるでしょう。

こうした中、以下の記事のような考えを持つ機関投資家も存在するため、経営者が手元の現預金を確保することに一定の理解を示す動きは強まるかもしれません。

配当より雇用維持を 機関投資家、コロナ対応で転換

企業が株主のために利益を追求することで、社会全体でみれば経済成長が促され、働き手も豊かになれるというのが資本主義の利点とみられてきた。しかし金融危機時には米企業を中心に従業員の削減で利益や資金を確保し、株主への配当や自社株買いを優先した。格差拡大で社会が分断したと批判も出て、短期的な株主利益への偏りが見直されてきている。新型コロナによる雇用危機では能力のある従業員を失う方が、長期的に競争力が落ちるとの考えが投資家の間に広がる。

日本経済新聞 2020年4月26日

一方で、ある程度の現預金の確保は認めるものの過剰なまでに内部留保を積み上げ続けることは、アクティビストはもとより、多くの機関投資家は良しとしないと思います。特に、ここ数年間、日本企業の内部留保は過去最高と言われるほど厚くなっています。

機関投資家の多くは、危機を乗り越えるための現預金の確保には理解を示しつつ、コロナ危機後を見据え、今のうちに企業に対して抜本的な改革を進めるための投資を促すでしょう。たとえば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)や本格的な働き方改革等による生産性の向上などの取り組みに対してです。

こうしたことを踏まえると、ここ2~3年、活発な動きをみせていたアクティビストの企業への働き掛けにも変化が生じる可能性があります。

たとえば、コロナ危機を乗り越えるために、手元現預金は厚めに確保することを優先したいと経営者が主張した場合、増配や自社株買いなどの株主還元策をアクティビストが要求したとしても、有事の現在において、他の株主からどこまで賛同を得られるかはわかりません。

一方で、手元現預金を厚めに確保することには理解を示しつつ、コロナ危機後を見据え、今のうちに必要な経営改革を断行するべきと、アクティビストが主張した場合はどうでしょう。

この場合、具体的な経営改革の内容にもよりますが、主張自体は正論ですし(特に日本の大企業の多くは、抜本的経営改革を求められながらこれまで避けてきているので)、今取り組まなければいつ取り組むのかと、他の株主からの賛同も得られやすいでしょう。

コロナ危機をきっかけに、アクティビズムの形も、この数年間、日本では主流であった株主還元策を第一としたものから、経営改善型へと変化するかもしれません。

いずれにしても、コロナ危機によってアクティビストの企業への要求内容は変わる可能性があるものの、アクティビズム自体が弱まることはないと思います。そして、そのこと自体は日本企業の将来を考えると、決して悪い話ではないかもしれません。