コーポレート・ガバナンスニュース(2020/9/12)

本日は、以下の3つの記事について取り上げます。

  1. 社外取締役、統治改革前の3倍 女性役員は2倍
  2. マスク氏の巨額報酬、賄うのはテスラ株主か
  3. ガラスの天井打破したシティのフレーザー氏、金融界女性に道開く

※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します

 

1.社外取締役、統治改革前の3倍 女性役員は2倍

【注目ポイント(記事一部引用)】
上場企業で取締役会の多様化が進んできた。3月期決算企業の社外取締役は6月末時点で約5400人と、企業統治改革が始まる前の2013年6月末に比べ約3倍に増えた。女性役員は約1300人と5年間で2倍超になった。様々な経歴を持つ人が集まることで取締役会の活性化が期待できる。一方で複数の企業で取締役を兼任する人も増え、人材不足が課題になっている。

【コメント】
社外取締役の役割が以前のように「月に1度、数時間程度の取締役会への出席」だけであれば、数社兼務することは問題ありませんが、現在のように役割が拡大し、質・量ともにコミットメントを求められている状態であれば3社程度が限度ではないでしょうか。下記の参考記事にある通り、社外取締役のあるべき役割を果たすのは、1社であってもかなり大変なはずです。ちなみに、GEでは社外取締役に対して3社以上の兼務を禁止することを取締役の要件として定めています(リンク先の3 Qualificationsを参照 )

 

参考記事

<解説・前編>社外取締役の在り方に関する実務指針

<解説・後編>社外取締役の在り方に関する実務指針

 

2.マスク氏の巨額報酬、賄うのはテスラ株主か

【注目ポイント(記事一部引用)】
米電気自動車(EV)大手テスラの驚異的な株価急騰のおかげで、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は近く巨額の報酬パッケージを現金化できる見通しだ。

【コメント】
以前こちらの記事で取り上げたように、イーロンマスクの報酬としては、時価総額を達成基準としたストックオプションが設定されており、その額として2200億円相当の付与が予定されています。今回の記事では、その報酬を支払うことの妥当性について疑問を投げかけています。確かにこれだけの巨額のオプションを行使した場合、株価への影響も与えかねませんが、そのことは外ならぬイーロンマスク自身が理解しているはずです。むしろ、これだけの報酬を支払うことの妥当性を問うのであれば、株式報酬を株価に連動したストックオプションのみで設定することへの疑問の方がまだ検討の余地はあるように思います。

3.ガラスの天井打破したシティのフレーザー氏、金融界女性に道開く

【注目ポイント(記事一部引用)】
ゴールドマン・サックス・グループで女性トレーダー初のパートナーとなった経歴を持つジャッキー・ゼナー氏は10日午前、ユタ州の自宅の食卓で夫から朗報を告げられた。それは「ウォール街で初の女性最高経営責任者(CEO)誕生」だった。

【コメント】
昨日もジェーン・フレーザーが米国の大手銀行としては初めての女性のCEOに就任する記事を取り上げました。今回の記事で何か新しい情報があるわけではありませんが、記事の中の以下の部分に興味を持ちました。

「女性のキャリア推進を支援する非営利団体カタリストによると、S&P500種の構成企業では既に31人の女性が企業を率いている。」

S&P500企業の中で女性CEOの数は31名のことですが、つまり10%未満ということで非常に少ないと思います。もちろん、女性の経営幹部自体の数がまだまだ少ないということもそうですが、例えばCEOのサクセッションプラン(後継者計画)の中で検討される候補者人材の中に、そもそも女性の数が十分に確保されているのか、ということは今後検証が必要かもしれません。米国企業の場合は、CEOの内部昇格も外部からの招聘も分け隔てなく、ベストだと思う候補者の選出に取り組む傾向が高いので、優れた女性経営者であれば他企業から招聘することも可能なはずです。無理に女性候補者を増やす必要はありませんが、少なくとも人材プールが適切な設定となっているか、女性だからといって候補者から外れることがないかという検証は行っても良いと思います。