コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/20)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

  1. 脱・株主第一主義宣言から1年、「企業の目的」定義課題に
  2. コロナは日本企業のESGのリトマス紙になるか?資産運用大手のシュローダーが考察

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1.脱・株主第一主義宣言から1年、「企業の目的」定義課題に

【注目ポイント(記事一部引用)】
米経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が「企業の目的(パーパス)」を再定義し、顧客や地域社会など全て利害関係者(ステークホルダー)を重視しなければならないと宣言して1年が経過した。株主第一主義からの転換として注目を集めたが、具体的にはどのような変化があったのだろうか。現時点では、企業の目的という言葉の定義すら固まっていないことが課題として残ったと総括せざるを得ない。

【コメント】
昨年のビジネス・ラウンドテーブルでの株主第一主義から脱却し、多様なステークホルダーを重視するとの宣言には、これまでの米国企業の経営の在り方の転換がいよいよ起きるのでは、と注目が集まりました。しかし、現状ではその取り組み状況が芳しくないだけでなく、進捗状況をどのように計るかという点でさえも目立った進展がないようです。新型コロナウイルスの影響により、多くの企業で大幅な業績の悪化が見込まれますが、従来の経営状況への回復を目指すというよりは、大きなパラダイムシフトの中で、どのように変革を遂げていくかが課題となっています。ESG投資がより一層重視されるように、米国企業にとっても、単に株主利益だけを追求することの限界は感じているはずで、新たな経営の在り方を試行錯誤しながら、どのように成果を出すかが問われています。

 

2.コロナは日本企業のESGのリトマス紙になるか?資産運用大手のシュローダーが考察

【注目ポイント(記事一部引用)】
英国に本社を置くシューローダーの日本法人シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は8月19日、「新型コロナウイルスと日本企業」と題したレポートを公開した。運用部日本株式ファンドマネジャーの豊田一弘氏が「新型コロナウイルスと日本企業が取り組むESGについて考えてみたい」と考察を述べている。

【コメント】
今回の記事の中で、新型コロナウイルスをきっかけに、企業のESGへの取り組みの本気度が試されると豊田氏は指摘していますが、先日、こちらの記事であったように、ESGに取り組んでいると見せかける「ESGウオッシュ」は、こうした言葉があることからもわかるように、珍しい現象ではなく一定数の企業で見受けられます。概念としてESG的な取り組みの重要性は理解していたとしても、いざ目の前の事業の現状や収益目標との兼ね合いで考えたときに、どうしてもESGを取るか、利益を取るかといった二項対立的な思考から脱せない企業が少なくないのではないでしょうか。先日エーザイがESGの何が企業価値の向上に寄与しているのかを独自に分析し、公表していることが報じられましたが、求められているのは絶対の正解ではなく、エーザイのようにESGをどのように自社の価値創造プロセスに織り込もうとするか、測定するかという試みであり、そうした取り組みの有無が本気度を示しているのだと考えます。