コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/21)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

  1. 日立、日立金属を売却へ 「選択と集中」が最終段階に
  2. 世界で大型M&A、コロナ後にらむ デジタル囲い込み

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1.日立、日立金属を売却へ 「選択と集中」が最終段階に

【注目ポイント(記事一部引用)】
日立製作所が約53%の株式を保有する上場子会社、日立金属を売却する検討に入ったことが日経ビジネスの取材で明らかになった。売却に向け外資系証券会社をファイナンシャルアドバイザーとして雇い、入札の準備に入った。日立金属は日立製作所グループの「御三家」の一角。同じく御三家の一つだった日立電線は2013年に日立金属と合併しており、もう一つの日立化成は今年、昭和電工に買収されている。日立金属の売却が進めば、「御三家」がすべて日立グループの外に出ることになる。

【コメント】
日立グループには、2006年時点で連結上場子会社が22社ありました。その後、事業の選択と集中を進める中で、2019年時点では4社(日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズ)へと絞り込んでいました。新聞報道によると2019年7月の時点で、日立製作所の東原CEOは、「上場子会社4社のトップと世界で事業を伸ばしていくためにどうすればいいかを議論している」とグループ再編の検討状況を語ると共に、現中期経営計画が終わる2021年度までに結論を出す考えを示唆していたようです。その後、ご承知の通り、日立化成は昭和電工に売却、日立ハイテクノロジーズは完全子会社化されました。今回日立金属の売却方針が報じられていますが、自然と日立建機の今後の行方にも注目が集まります。日立グループは、日本企業の中でも指折りの子会社が多い会社でした。「日立の木」で有名なCMでは、同社のグループ会社名が列挙されますが、その数が年々少なくなっていることに気付いている方も多いと思います。事業の選択と集中は、取締役会の重要な討議テーマです。その際に、先日経産省が公表した「社外取締役の在り方に関する実務指針」で示したように、社外取締役自身が取締役会の中でこうした重要テーマについて積極的に議論に取り組んでいくことが求められています。以下の解説記事で詳細を紹介していますので、是非ご一読ください。

 

参考記事

<解説・前編>社外取締役の在り方に関する実務指針

<解説・後編>社外取締役の在り方に関する実務指針

 

2.世界で大型M&A、コロナ後にらむ デジタル囲い込み

【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルスをきっかけに世界規模での再編が始まっている。市場混乱で一時停滞したM&A(合併・買収)は感染拡大前の水準を回復、今月も1000億円を超える大型案件が相次ぐ。経営環境の激変で、生き残りをかけた事業売却だけでなく、急成長が見込める分野の囲い込みも激しくなっている。金融緩和で資金を調達しやすいことも後押しする。

【コメント】
新型コロナウイルスによる企業業績の悪化に伴い、一時的に停滞していたM&Aが、コロナ後を見据えて活発になっているとのことです。こうした意思決定を迅速に判断し、実行できる企業とそうでない企業の大きな差の1つは、常日頃から自社の経営戦略について取締役会で、深い議論が出来ているかどうかです。恐らく、今回の記事で取り上げられた企業のM&Aは、コロナ以前から買収(または売却)候補として取締役会等でも議論の俎上に上げ、様々な検討を進めていたはずです。なお、コーポレートガバナンスコードやそれを実務上補完する実務指針において、取締役会では、M&Aを含めて中長期の企業価値向上に向けた経営戦略について審議の質を高め、建設的な議論を行うことが求められています。