コーポレート・ガバナンスニュース(2020/7/28)
本日は、以下の3つの記事について取り上げます。
- トップの姿勢が重要に 社外取締役制度の課題
- 東芝の取締役選任、米ファラロンがエフィッシモなどの提案支持
- 持ち合い、狭まる包囲網 「前向き」提携でも厳しい目
※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します
1.トップの姿勢が重要に 社外取締役制度の課題
【注目ポイント(記事一部引用)】
近年の社外取締役の急増により、取締役会はどう変わったのか。取締役会の実効性は高まっているのか。これらを探るために、筆者は東証1部上場企業13社の取締役会の運営を2017~19年にかけて調査し、経営トップ、独立取締役(現在は社外取締役の大部分が株主と利益相反のない独立取締役である)、事務局にインタビューを行った。その結果、独立取締役の質問や発言によって取締役会の議論が活性化し、議案が修正・否決されるケースも増えていることがわかった。取締役会に緊張感が生まれ、経営トップも社外取締役の貢献を積極的に評価している。一方で会社間の差も大きくなっている。
【コメント】
取締役会運営に関する実態調査自体が日本ではまだまだ少ない現状を踏まえると、今回の調査自体は貴重なものだと思います。一方、記事からはわかりませんでしたが、社外取締役がうまく活躍で来ている企業とそうでない企業は明確にあり、何がその差を生んでいるのかは多くの企業が関心を持っているはずです。筆者が支援した実例を振り返っても、社外取締役の当事者意識はもちろん重要ですが、企業側が社外取締役を「お客様扱い」している企業ほど、苦労しているように思います。企業側が社外取締役に何を期待するか、外部からの客観的な意見の提供や監視だけでなく、経営にどのように寄与してもらうか、その点を明確にすることが最初の取っ掛かりとしては重要です。
2.東芝の取締役選任、米ファラロンがエフィッシモなどの提案支持
【注目ポイント(記事一部引用)】
米ヘッジファンドのファラロン・キャピタル・マネジメントは22日、東芝(6502.T)の取締役選任を巡り、アクティビスト(物言う株主)のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントや3Dオポチュニティー・マスター・ファンドが提案している候補者に賛成票を投じると発表した。
【コメント】
エフィッシモが提案している取締役選任案に対して賛成するアクティビストファンドが新たに増えました。これで、エフィッシモ、3D、今回のファラロンと全体の25%の議決権がエフィッシモの取締役選任案に賛成する見通しです。先日こちらの記事で取り上げましたが、改正外為法の事前審査問題も絡み、単に東芝1社だけの問題だけではなく、日本市場に投資するアクティビストファンド同士が連携して本件に対峙しているような印象を受けます。
3.持ち合い、狭まる包囲網 「前向き」提携でも厳しい目
【注目ポイント(記事一部引用)】
株式相場が再び上値を試す展開となる中、出遅れが目立ってきたのが政策保有株を増やしている銘柄群だ。次世代に向けて必要な資本提携をした結果とする企業が多いが、本当に必要な資本提携かどうかを見極めようとする投資家の視線は厳しくなっている。制度面でも縮減を求める動きは強まっており、持ち合いに対する「包囲網」が狭まってきた。
【コメント】
2018年に改訂されたコーポレートガバナンスコードでは、政策保有株式の保有方針を明確にすることだけでなく、明確に「縮減する方針」を定めることを求められています。株式の持ち合い比率が他国に比べて異常に高いことや、こうした持ち合いが健全なコーポレートガバナンスの実現を阻害してきた面があるため、縮減方針自体は問題ではありません。また、中には勘違いされている方もいらっしゃるのですが、一律に他社の株式を保有することについてNGを出している訳ではなく、他社との戦略的な業務資本提携のように、株式保有することで得られるメリットが明確に説明できれば何ら問題ありません(むしろ、これまではそうした根拠があいまいなまま、野放図に株式保有が行われていたことが問題でした)。