コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/28)
本日は、以下の2つの記事について取り上げます。
- ESG投資、「自然資本」にも
- コロワイド、大戸屋TOB延長に込められた策略と誤算
※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します
1.ESG投資、「自然資本」にも
【注目ポイント(記事一部引用)】
ESGの「E=環境」は気候変動問題として使われることが多いが、投資家の間で、気候変動以外にも広げようとする動きが出始めている。生物多様性の保全や水不足といった課題に、ESG投資を活用しようという。
【コメント】
ESG投資のうち、Eの部分は気候変動関連がほとんどですが、それ以外にも広げようとする投資家の動きを記事では取り上げられてます。2020年の株主総会では、みずほFGに対して、日本では初めてとなる気候変動株主提案が環境NGOから提出されました。結果は否決でしたが、こちらにある通り35%の賛成率を集めたということは、特に海外の機関投資を中心に、こうした問題への関心の高さを示しています。昨今、取締役会における取締役個々人に求める要件に注目が集まり、スキルマトリックスを公開する企業も増えています。ESGについてもその専門性を踏まえた議論が会社として重要性を増す中で、取締役に対しても少なくとも1名はESGの専門性を備えた人材は必須となるはずです。
2.コロワイド、大戸屋TOB延長に込められた策略と誤算
【注目ポイント(記事一部引用)】
焼肉店「牛角」や居酒屋チェーン「甘太郎」などを傘下に持つ外食大手のコロワイドは25日、定食チェーンの大戸屋ホールディングス(HD)に対して実施しているTOB(株式公開買い付け)の期限を9月8日まで延長すると発表した。当初の期限は8月25日までだったが、もともと持っている19%と合わせ、TOB成立の条件(下限)に設定していた発行済み株式の45%に応募数が届かなかった。さらにTOB価格は1株当たり3081円と変えないまま、下限を40%に引き下げ、成立の可能性を高める手段に出た。一連の対応からはコロワイドの用意周到な策略とともに誤算も透けて見える。
【コメント】
記事では、当初コロワイドが大戸屋に対するTOBを発表した際の対応について、用意周到な策略があったのではないか、と以下の通り指摘しています。「ではなぜ最初から下限を40%に設定しなかったのか。複数のM&Aアドバイザー経験者は「45%という絶妙な下限設定で大戸屋HDを足止めしようとしたのでは」と推測する。どういうことか。
このままならTOBを阻止できるかも、と大戸屋HDに思わせることができるタマを投げることで、ホワイトナイト(白馬の騎士)探しに本腰を入れさせないようにする、というわけだ。実際、ある大戸屋HD関係者はTOB期間中に「個人株主の岩盤があるので45%なら意外と守り切れるのではないか」と語っていた。」(以上記事より引用)
あ過去敵対的TOBで過半数を取得した例は、日本ではなく、コロワイド側が極めて高いハードルを示したことに対して、大戸屋側にあえて油断をさせた、ことを推測しています。これが事実なのかはわかりませんが、経営権を巡る戦いでは当然ありとあらゆる攻防が繰り広げられるため、実際にこうした意図をもってコロワイド側が仕掛けてきていたとしても不思議はありません。
アクティビスト対策も敵対的TOBもそうですが、実際に事が起きてから対処するでは既に遅いのです。こうした万が一に備えた対策や方針も、本来は取締役会で常日頃から検討されるべきテーマですが、現状そうしたことに対処できている企業の方が圧倒的に少ないように思います。