コーポレート・ガバナンスニュース(2020/7/19)
本日は、以下の記事について取り上げます。
- 社長報酬、日米格差12倍 日本は業績連動少なく
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1.社長報酬、日米格差12倍 日本は業績連動少なく
【注目ポイント(記事一部引用)】
日米間で経営トップの報酬格差が広がっている。2019年度の社長、最高経営責任者(CEO)の平均報酬額は米国が16億2千万円と、日本の1億3千万円の約12倍だった。18年度(11倍)から拡大した。日本企業の役員報酬は成果報酬部分の占める割合が小さく、引き上げが課題になっている。
【コメント】
日本企業の役員報酬水準は他のグローバル企業と比べて段違いに低い水準にあり、トップの報酬が低ければ、他の経営幹部以下の報酬も相応の水準となる。結果的に日本企業の国際的な優秀人材の獲得競争に大きなハンデを負うことに繋がる危険性があるというのは、当ブログを閲覧頂いている読者の多くは、既にご存じのことだと思います。ここでは、このこと以外に役員報酬が低いことの問題点を挙げておきたいと思いますが、結論を先にいうと、報酬によって経営者を適切に動機づけられないというのがコーポレートガバナンス上は大きな問題です。過去、日本企業の経営者はその地位に存在する時点で受け取る報酬は確かに諸外国の経営者と比べて極めて低い水準にありました。しかし、その地位を辞した後も、相談役・顧問として当該企業に関与し続け、さらにグループ会社や関連団体などへ天下るなど、相応の役職を経験した方であれば生涯を通じて企業に手厚く面倒をみてもらえるような仕組みが整備されていました。そのため、在職時の役員報酬だけではなく、退任後も生涯を通じて得ていた利得を含めて、「役員としての処遇」が設計されていたのが、日本企業の伝統的な役員報酬であったと捉える方が実態としては正しいのです。こう考えてみると、日本企業の役員報酬が低水準だからといって、日本の経営者は金銭以外の動機付けがうまく機能していると唱える一部の意見は完全に的外れであることがわかると思います。むしろ、従来のような役員報酬の設計では、役員としての職を辞した後の自身の処遇がどうなるかが気になり、失敗をしないこと、つつがなく役員の任期を全うすることが優先され、本来の役員としての責務を果たさない方向に動機づけされてしまうマイナス面が大きかったといえます。経営者の不作為を助長するという意味では、コーポレートガバナンス上は極めて危うい状態です。このように役員報酬のあり方を「生涯に渡っての役員経験者としての処遇」から「役員としての地位にある現在の役割・責務に対して報いるもの」として位置付けを変えてきたのが、2000年代以降の日本企業の役員報酬の大きな特徴でした。その結果、記事にあるように、徐々にではありますが報酬水準の上昇や業績連動報酬の増加に結果として表れており、この傾向は今後も更に続くと思います。