コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/21)

本日は、以下の3つの記事について取り上げます。

  1. コロナと総会(4)取締役 株主に専門明示 対話を活性化へ

  2. コロナと総会(5)役員報酬 決め方開示 まだ6割弱

  3. コロナと総会(6)機関投資家 「社外取3分の1以上」を要請

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1.コロナと総会(4)取締役 株主に専門明示 対話を活性化へ

【注目ポイント(記事一部引用)】
取締役会の多様化が注目を集めている。ESG(環境・社会・企業統治)の観点で企業を見極める投資家が増えているところに、新型コロナウイルスのまん延という未曽有の事態も直撃。持続的な経営や収益成長のために幅広い専門性が不可欠となっているためだ。

【コメント】
取締役会全体に占める社外取締役の比率が高まってきたことをきっかけに、取締役の要件についての議論が活発になっています。取締役の要件を整理したスキルマトリックスを開示する企業が増えてきたことはそうした結果でもあるのですが、以前から申し上げているように個々のスキルマトリックスがどうかということよりも、なぜそのスキルマトリックスが大事であると考えているか、必要な要件を備えた取締役を集めることで、どのような取締役会を目指すかという企業の思想の方が、より重要です。このような取締役会や取締役についての基本方針を公表している企業は日本ではまだ少数ですが、欧米グローバル企業をみるとその点を積極的に開示しています。日本企業でも今後同様の動きが徐々に増えてくると思います。

 

2. コロナと総会(5)役員報酬 決め方開示 まだ6割弱

【注目ポイント(記事一部引用)】
上場企業に役員報酬の仕組みの開示を求める圧力が一段と強まっている。2018年改定の企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)がつくった流れを、19年12月成立の改正会社法が後押ししている。新型コロナウイルスの影響による業績悪化で報酬の減額表明が相次ぐなか、株主総会で報酬議案への理解を得るため透明性がより重要になっている。

【コメント】
役員報酬の決め方を開示するというのは、実は深いテーマです。そもそも会社として役員にどのように報いるのか、役員はどのような役割を果たし、何に責任を負うのか、そして業績を計る仕組みは何にするのか、どのように業績評価と報酬を連動させるのか・・・といった一連の事柄が役員報酬の基本方針や役員報酬制度として設計されている必要があります。しかし、現状としてはこのように整理されている企業の方がまだ少数派かもしれません。さらに今後は社外取締役の報酬についても、遠からず多くの企業で見直しが入るはずです。現状は社外取締役に1千万円以上の報酬を支払う企業は少数ですが、社外取締役の役割やコミットメントをより高いレベルで求め始めている状況を鑑みると、現在の水準から2~3倍程度の報酬は支払う必要があると思います。このとき、社外取締役の報酬についてもどのように決めているのか、開示の義務は生じるはずです。

 

3. コロナと総会(6)機関投資家 「社外取3分の1以上」を要請

【注目ポイント(記事一部引用)】
コロナ禍が世の中を揺さぶるなかでも機関投資家の企業統治に対する視線は厳しさを増している。今年は投資先の取締役選任議案への議決権行使基準を厳しくし、社外取締役が「3分の1以上」でないと賛成しないなどとする動きが相次いでいる。外部の目を積極的に取り入れて企業価値を高める体制の構築を一段と求めている。

【コメント】
機関投資家が投資先企業に求める社外取締役比率は年々高くなっています。こうした機関投資家の動きは、元々社内の取締役比率が高かった日本企業にとって社外取締役を増やすための必要な外圧として機能してきた面はあると思います。一方で、社外取締役比率のように外形的にガバナンスを強化すること以上に、ガバナンスの実効性を高めることの方が本来は重要です。アクティビストによる株主提案でも今年は取締役の選任や質に関する内容が増えていますが、社外取締役の比率が高まった現在だからこそ、社外取締役の質や要件について多くの企業で問われると思います。