コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/20)

本日は、以下の4つの記事について取り上げます。

  1. 東芝人事に透ける節目感、小林取締役会議長が退任へ
  2. 新型コロナでアクティビスト提案に変化、株主還元からガバナンス重視へ

  3. テレ朝HDは地上波電波返上含め検討をー米RMBが経営改善提起

  4. ISSがオアシスの株主5提案に全て賛成、三菱倉は一転歩み寄り

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1. 東芝人事に透ける節目感、小林取締役会議長が退任へ

【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝は19日、社外取締役で取締役会議長を務める小林喜光氏が退任の意向だと発表した。小林氏は、東芝が経営危機に陥るきっかけとなった不正会計問題発覚直後の2015年9月から社外取を務めてきた。一時は債務超過に陥り上場廃止も危ぶまれたが、足元では安定した収益を上げられるようになった。再建を監督してきた小林氏の退任は1つの節目といえそうだが、難題もなお多い。

【コメント】
昨日もコメントしましたが、2019年の株主総会で東芝は12名の取締役のうち7名を新たに選任していました。株主にはアクティビストファンドが複数名を連ね、外国人社外取締役も複数存在しますので、社外取締役とはいえ、取締役会議長の職は大変な激務だったのではと推察します。今回の東芝のように今後危機的状況下における取締役会議長職を社外取締役が務めるケースは増えると思いますが、小林氏のケースが一つのモデルになるのではと予想されます。

 

2. 新型コロナでアクティビスト提案に変化、株主還元からガバナンス重視へ

【注目ポイント(記事一部引用)】
日本の3月期決算企業の株主総会シーズンが来週ピークを迎える。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業側は開催規模の縮小や時間の短縮化、オンライン開催への切り替えといった対応を迫られているが、変化がみられるのは開催の形態だけではない。これまで企業に株主への利益権限を強く迫ってきたアクティビスト(物言う株主)の提案にも、変化が生まれている。

【コメント】
新型コロナウィルスによる企業業績の悪化等を受けて、従来の株主還元策からガバナンス改善策へとアクティビストの提案が変化しつつあるとのことです。その多くが、取締役選任に関する提案ですが、海外の提案事例なども踏まえると、機関設計の見直し、株式報酬制度の導入、社長・CEO職と取締役会議長職との兼務解消なども今後株主提案が増えるかもしれません。このうち、社長・CEO職と取締役会議長職との兼務解消は、日本ではまだまだハードルは高いと思いますが、指名委員会等設置会社では社外取締役が取締役会議長を務めるケースが徐々に増えており、実現可能性は決して低い訳ではありません。

 

3.テレ朝HDは地上波電波返上含め検討をー米RMBが経営改善提起

【注目ポイント(記事一部引用)】
米アクティビストファンドのRMBキャピタルは、在京テレビ局のテレビ朝日ホールディングスに対し、株主として提言する地上波放送の電波返上を含む経営改善策を公表する方針だ。企業の中長期的な経営戦略に注目が集まる株主総会シーズンに問題提起することで、ほかの株主を含めた幅広い議論を促進する狙いがあるとしている。

【コメント】
地上波放送の電波返上とは、つまりTVのビジネスモデルの見直しと同義であり、普通に考えるとテレビ朝日が素直に検討を行うとは考えづらいでしょう。このことはRMBキャピタルも当然想定済ですが、ではなぜこのような提案を行ったのでしょうか?あくまで勝手な憶測ですが、恐らく他の株主へのアピールを含めた話題作りの一環と思います。同じような事案としては、イギリス系のアクティビストファンドが大株主であるTBSが、2018年に同社が保有する東京エレクトロン株をTBSの既存株主に現物分配するよう株主提案をされ、大きな注目を集めました。テレビ朝日もTBSもメイン事業の地上波放送業は苦戦する一方で、株式や不動産など保有資産はリッチであることが特徴です。耳目を集める提案を行い、他の株主の賛同や関心を得つつ、最終的には株主還元策を迫るというのが放送事業者に対するアクティビストの狙いではないかと思います。

 

 

4.ISSがオアシスの株主5提案に全て賛成、三菱倉は一転歩み寄り

【注目ポイント(記事一部引用)】
三菱倉庫が26日に開催予定の定時株主総会に関連して、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が、香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントが提出した5件の株主提案全てに賛成を推奨したことが17日までに分かった。

【コメント】
元々、株主提案に反対していた三菱倉庫ですが、ISSの今回の表明を受けて方針を変更し、経営指標や2021年以降の株主総会での取締役選任などで歩み寄る方針を公表しています。このように、アクティビストの提案に会社が一定の理解を示すケースが最近は増えています。特にガバナンス関連の提案に関しては、提案内容に一定程度の合理性がある場合が多く、全面的に否定すること自体が困難であるともいえます。今後も同様のケースは増えることが予想されます。