コーポレート・ガバナンスニュース(2021/3/15)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.ESG推進、取締役の責務どこまで

2.英蘭シェルが「排出ゼロ」実現を託す地質学者

3.東芝、統治巡り株主が疑義 臨時総会の争点は

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1.ESG推進、取締役の責務どこまで

【注目ポイント(記事一部引用)】
企業と株主との対話でESG(環境・社会・ガバナンス=統治)は避けて通れないテーマになった。Eの代表的な課題である「脱炭素」の取り組みやSに分類される「多様性」の促進は、取締役の善管注意義務・忠実義務の対象と考えられるようになった。こうした世界の潮流は日本の企業統治(コーポレートガバナンス)改革にも影響を与える。

【コメント】
日経の小平編集委員の論考は、グローバルの視点から日本のコーポレートガバナンスの在り方を見直す際に有益な示唆を得られるため、筆者はよく参考にさせていただいています。

今回の記事のテーマである「ESG推進に対して企業の取締役はどこまで役割や責任を負うか」ということに関しては、ESG自体が日本を含め世界的に重要なテーマとなっている以上、日本企業においてもグローバルのスタンダードレベルの対応が求められることになると考えます。

以前から指摘しているように、ここまでESGがホットトピックとなっている中で、取締役会の中にESGの専門性を持つ人材がいないこと自体が、外部のステークホルダーに対してネガティブな印象を与えかねません。次期コーポレートガバナンスコードの改訂時には取締役に求める要件を示す「スキルマトリックス」の公開が求められる予定ですが、その際、どの程度の企業がESGの専門性を持つ取締役を選任しているか、気になるところです。

 

2.英蘭シェルが「排出ゼロ」実現を託す地質学者

【注目ポイント(記事一部引用)】
石油依存からの脱却を掲げて事業再編を推進中の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは、豪英資源大手BHPグループの元最高経営責任者(CEO)、アンドリュー・マッケンジー氏を新会長に指名した。

【コメント】
ロイヤル・ダッチ・シェルの会長に、BHPのCEOを務めたアンドリュー・マッケンジー氏が指名されました。記事によるとマッケンジー氏の役割の一つとして、現在のファン・ブールデンCEOの後継者選任も期待されるとのことです。

エネルギー企業のように、脱炭素化に向けた投資家・株主の影響を大きく受け、事業構造やビジネスモデル自体の見直しを迫られている企業においては、中長期戦略の大幅な転換とそれに相応しい経営トップの選任は企業の存亡を掛けた重要なテーマです。CEOサクセッションはそもそも難易度が高いテーマで、平時においても成功確率は決して高い訳ではありません。シェルがどのようにCEOを含めたリーダーシップチームの後継者計画を立て、遂行するか、注目しています。

 

3.東芝、統治巡り株主が疑義 臨時総会の争点は

【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝は18日、東京都内で臨時株主総会を開き、筆頭株主など2つのアクティビスト(もの言う株主)が出した株主提案を審議する。2つの株主は東芝の昨年の定時株主総会の運営に不備があったなどとして、企業統治に疑義を呈する。東芝は株主提案に反対を表明している。他の株主がどう判断するか注目される。

【コメント】
昨年8月に実施された定時株主総会では、大株主であるアクティビストファンドの株主提案は否決され、車谷CEOが取締役を再任されたこともあり、一先ず問題は解決したかのようにみえました。

しかし、昨年9月に一部議決権行使が信託銀行の集計不備によって正確に集計されなかった問題が発覚したことで、その後も東芝に対するアクティビストの対応は厳しさを増しています。

今回の臨時株主総会の結果がどうなるかはわかりませんが、株主であるアクティビストとの対立は今後も続くでしょう。