コーポレート・ガバナンスニュース(2021/3/9)
1.改正会社法の下で企業統治の質を高めよ
2.日本製鉄、敵対的TOBで東京製綱株2割弱取得
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1.改正会社法の下で企業統治の質を高めよ
【注目ポイント(記事一部引用)】
改正会社法が3月から施行された。5年ぶりの今回の改正は、役員報酬の決め方を見えやすくしたり、社外取締役の設置を義務化したりするのが主な内容だ。企業は法改正を好機ととらえ、コーポレートガバナンス(企業統治)の質をさらに高めてほしい。
【コメント】
3/1施行の改正会社法によって「個別役員報酬の決定方針」を取締役会で決定することが上場企業に対して求められるようになりました。この法改正に関連して、「従来、多くの企業が採用していた、社長による一任決議は今後できなくなるのか」という質問を数社から頂きましたので、お答えいたします。結論から申し上げると、代表取締役による報酬決定の一任決議は引き続き運用可能です。しかし、今回の役員報酬の決定方針を定めたことにより、代表取締役の一任決議もその決定方針に基づき、行われるということに留意が必要です。
つまり、何でもかんでも社長の一存で決められるという意味での一任決議はできなくなるということです。日産のゴーン元CEOの報酬を巡る一連の事件で批判されたように報酬決定のお手盛りを排するべきという意見や、透明性・客観性のある手続きに基づいて報酬決定を行うべきとするコーポレートガバナンス・コードの趣旨を考えてみれば、当たり前のことではあります。
2.日本製鉄、敵対的TOBで東京製綱株2割弱取得
【注目ポイント(記事一部引用)】
日本製鉄は9日、東京製綱に対するTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。東京製綱の経営陣が反対した敵対的TOBだったが、応募は買い付け上限を上回り、出資比率は9.9%から19.9%に高まる。資本の力を背景に経営体制の見直しを迫ることになるが、2割弱では経営への関与が限定的で効果を疑問視する声もある。
【コメント】
日本製鉄による東京製綱への敵対的TOBが成立しました。しかし、元々経営体制の見直しを求めたTOBであったため保有比率は19.9%と、依然限定的な関与に留まります。今後、東京製綱の経営陣の入れ替えが進むでしょう。特に長年代表を務めていた田中重人会長の退任は確実視されています。
問題なのは、業績が低迷していながらも経営陣の交替などのガバナンスが機能していない現状をどう変えるか、です。今回のTOB成立によって日本製鉄主導で東京製綱の改革が行われる可能性が高いとは思いますが、東京製綱は引き続き上場を維持するため、いわゆる「上場子会社」に該当します。
「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」に定めのある通り、上場子会社には少数株主の権利保護の観点から、支配株主(この場合は日本製鉄)からの高い独立性を確保したガバナンスの構築が求められます。この点、特に社外取締役に期待される役割が大きくなりますが、日本製鉄はTOB実施時に社外取締役が十分に機能していないことを指摘しているため、恐らくまずは社外取締役を含めた取締役構成の見直しから進むのではないかと推察します。