コーポレート・ガバナンスニュース(2021/3/8)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.ESGアクティビズム、「時間軸の悲劇」乗り越える力に

2.生え抜き女性役員、ようやく増加 世界水準は遠く

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1.ESGアクティビズム、「時間軸の悲劇」乗り越える力に

【注目ポイント(記事一部引用)】
「セイ・オン・クライメット」(Say on climate)。グローバル市場でこんな株主運動が始まった。企業の気候変動問題への対応策を株主総会で投票にかけることだ。役員報酬案を総会決議とする「セイ・オン・ペイ」(Say on pay)の脱炭素版。どちらも強制力はないが、反対票が多ければ株主の勧告として取締役会に圧力がかかり、内容の見直しにも迫られる。

【コメント】
記事の最後に「環境問題がアクティビズムの中心課題になる予感も漂っている」とあるように、ブラックロックが投資先企業への脱炭素に向けた取り組み要求を掲げて以降、続々と他の機関投資家も同様の動きを強めています。

欧米企業の上場企業の役員報酬に対して株主が意見表明を行う「Say on pay」によって高額報酬への批判が強まり、経営者の報酬増加に対して強制力はないものの一定の抑制効果を生んでいるのと同様に、「Say on climate」の動きが広まると、気候変動を含むESG観点での企業への圧力はより高まるはずです。

この流れは不可逆であり、企業側には迅速に対処する以外の選択肢はないでしょう。投資家からの圧力が強まったことで、欧米では喫緊の取り組みとして企業側も切迫した状況に直面していますが、遠からず日本企業も同様の事態に直面することになるはずです。

 

2.生え抜き女性役員、ようやく増加 世界水準は遠く

【注目ポイント(記事一部引用)】
主要企業で生え抜きの女性役員の登用が増え始めた。日本経済新聞社と企業統治助言会社プロネッド(東京・港)の共同調査によると、女性社内役員は2年で1.6倍に増え、平均7%とわかった。社外取締役として起用する例が大半だった日本でも社内役員が増え始めた。ただ、欧州では取締役での女性比率が4割に上る国もあり、海外水準には遠く及ばない。

【コメント】
経営陣や取締役の多様性の確保という点で日本企業には女性の登用が圧倒的に足りていない状況が続いています。今回の調査をみると、特に執行役員への女性登用数の増加が目立ちます。恐らく今後は「能力が同じであれば女性を優先する」という企業は増えるはずです。

ところで、役員の登用に際してはその下の階層である部長層・課長層の候補者人材がどの程度充実しているかが、登用する人材の質に大きな影響を与えます。結果として女性役員が増えていることは良いことではありますが、こうした部長層・課長層の女性登用率がどの程度充実しているかにも併せて着目していくことが、必要です。