コーポレート・ガバナンスニュース(2021/3/5)

 

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.統治指針の改訂 ロジック明確に

2.新興市場、手探りの開示強化 狙うは機関投資家

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1.統治指針の改訂 ロジック明確に

【注目ポイント(記事一部引用)】
企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の改訂が進められている。論点の一つは取締役会の機能をより発揮させることで、東証再編で生まれるプライム市場に上場する企業は、独立社外取締役を3分の1以上にするよう求められる方向だ。仮に東証1部の全企業が順守すれば、新たに1000人を超す独立社外取締役の選任が必要になる。知見や資質をもつ候補者は十分にいるだろうか。

【コメント】
コーポレートガバナンスコード(CGコード)は「コンプライ・オア・エクスプレイン(従うか、さもなければ説明せよ)」ということなので、説明さえできればコードの原則を実施しなくても特段のペナルティはない、ということになっています。

しかし、コードの先進国であるイギリスをみるとわかるのですが、基本的にはCGコードの原則は、そのときのコーポレートガバナンスのあるべき規範をもとに作られたものであり、コードを実施しない積極的な理由を見つけることの方が難しい場合が多いのが実態です。そのため、多くの会社ではコンプライ率は年々上昇することとなり、結果的に、総体として上場企業がCGコードの原則を遵守するのは、当然とみなされることにつながります。あるべき姿を示しつつ、徐々にガバナンスの底上げを図る、上手い取り組みだと思います。

米国市場のように上場規則の中に厳格なコーポレートガバナンス基準を設け、その条件を満たさない企業は上場ができない仕組みを採用するという方が、わかりやすいのは事実です。しかし、個々の会社の事情に配慮をしながら、コードによって原則を示しつつ全体の底上げを図るというのは、まだ対処のハードルは低いでしょうし、特に他社を気にする傾向の強い日本企業への影響力は大きいと思います。

 

 

2.新興市場、手探りの開示強化 狙うは機関投資家

【注目ポイント(記事一部引用)】
「投資家のことを考えれば情報は多い方が良いが、正直どこまで示すべきか迷った」

2月19日に東証マザーズへ上場したWACUL(ワカル)。市場再編に先行して昨年11月からマザーズへの新規上場では、経営戦略の詳しい説明「事業計画及び成長可能性に関する事項」の公表が必要になった。その第1号となった大淵亮平社長の頭に浮かんだのは競合会社だ。

【コメント】
東証の市場再編によって、上場企業全体のコーポレートガバナンスはより一層強化が進むと考えられます。現在のマザーズ市場は再編後にグロース市場へと変わりますが、今後はグロース市場の上場企業の中で、社外取締役の候補者不足の問題や指名・報酬委員会などの設置率の低さなどが課題となることケースが予想されます。

下記にある記事は、昨年の秋の記事ですが、その時点でマザーズ上場企業の指名委員会の設置率は8.6%、報酬委員会は13.8%と極めて低水準です。ガバナンスの重要なトピックである役員の選任や報酬に関して、上場する市場がどこであれ、その重要性は変わらないと考えると、今後グロース市場における指名・報酬委員会の設置率も徐々に上がっていくと思われます。

【参考記事】

ランサーズが指名・報酬委員会を設置。東証マザーズ上場企業の指名・報酬委員会の設置状況は?