コーポレート・ガバナンスニュース(2021/2/17)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.トップ交代が下手な日本 長期投資の妨げにも

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1.トップ交代が下手な日本 長期投資の妨げにも

【注目ポイント(記事一部引用)】
出番は月1~2回にもかかわらず、年俸1000万円超えも多い社外取締役に、もし報酬額にふさわしい役割があるとすれば、企業の潜在力を生かせる次のトップを全世界から発掘することではないか。最近話題の「組織委員会」に限らず、日本はトップ交代が下手だ。カリスマ経営者のたぐいまれな指導力でぐんぐん成長している一握りの日本企業も、いずれ来るトップ交代がギクシャクするかもしれないと考えると、長期投資をためらってしまう。

【コメント】
記事の全体的な論調は概ね正しいと思いますが、幾つか事実誤認とみられる部分が目立つため、その点を指摘したいと思います。

まず、社外取締役の報酬が1000万円を超える企業は、私の実感値として、それほど多くありません。実際に、朝日新聞と東京商工会議所との調査結果によると東証1部上場企業の社外取締役報酬の平均が663万円とのことです。800万円以上が3割とのことなので、1000万円以上といった場合にはもっと少ないはずであり、冒頭からやや読者の誤解を誘引するような書き方が気になります。

また、社外取締役が月1,2回程度の出番であるとするのも、実態を理解されているとは思えません。社外取締役は、取締役会に月1回出席をするだけというのは遠い昔の話であり、現在は取締役会への出席以外の活動ボリュームが大幅に増えています。たとえば、多くの場合、指名委員会や報酬委員会への参加は必要ですし、、そうした委員会開催前に事務局から事前説明を受けることや予定する討議内容の検討に関与するケースも多々あります。弊社の支援先企業のある社外取締役の方の例では、こうした委員会活動やそれに付随する業務を中心に、コンスタントに週2日以上当該企業のために時間を割いているというケースもあります。

2015年のコーポレートガバナンスコードの適用後、社外取締役の選任が進み、今では本年3月1日に施行される改正会社法でも社外取締役の設置が義務化されました。ガバナンスの重要な役割を社外取締役に期待する機運は高まり、経産省も社外取締役の在り方に関する実務指針で、社外取締役として本来果たすべき役割が事細かに明示しています。詳細は以下の参考記事を確認頂きたいのですが、実務指針を一読いただければ、現在の社外取締役の関与が月1,2回程度で済むとは到底考えられませんし、実際に活動のボリュームは大幅に増加しています。

 

【参考記事】

<解説・前編>社外取締役の在り方に関する実務指針

<解説・後編>社外取締役の在り方に関する実務指針