コーポレート・ガバナンスニュース(2021/2/9)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.再編が試す経営者のジレンマ

2.社外取、本質かすむ「数合わせ」

3.日本電産、報酬委員会を設置

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1.再編が試す経営者のジレンマ

【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、産業界で大胆な事業再編が始まった。事業をポートフォリオと見なして入れ替える発想は、日本でこれまで一般的ではなかった。しかし、将来性のない事業を抱え続ければ、成長できないどころか、存亡の危機が待つ。不採算事業や将来の成長が見込めない事業を整理し、成長が見込める事業へ投資を回す「事業ポートフォリオ改革」が本格的になってきた。

【コメント】
新型コロナウィルスを契機に、各企業の戦略転換は進み、事業構造改革に乗り出す企業も増えています。単なるコスト削減を超えて、強い事業を生み出すための本質的な企業変革にまで踏み込めるかどうかで、今後の成長可能性が決まるように思いますが、特に従来のビジネスが順調だった企業ほど、そのハードルは高いようです。

 

2.社外取、本質かすむ「数合わせ」

【注目ポイント(記事一部引用)】
日本の企業統治を巡って周囲が騒がしい。今春に3年ぶりに改定されるコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)で独立社外取締役が3分の1以上と、現行の2人以上から引き上げられる。これがはたして企業価値の向上に直結するのか、肯定派と反対派の溝が深まっている。

【コメント】
単に社外取締役の数合わせではいけないという議論は根強くありますが、こちらにもある通り、意思決定に際してある一定の影響力を及ぼそうとすると、クリティカルマスとして全体の30%程度を確保していくことに論拠はあります。

もちろん質の面は看過できない問題ではありますが、では質が充実することを待っていることがガバナンスの強化に得策かというとそうではないでしょう。

また、社外取締役の質が低くて困ると指摘する経営者や企業ほど、取締役を評価する仕組みである取締役会の実効性評価をおざなりにしていることが目立ちます。隗より始めよではありませんが、まずはそれぞれの企業が、自社の取締役に何を期待するか、を明確にし、実効性評価のような定期的なチェックも行いつつ、相応しい取締役像の明確化とその候補者探しに本腰を入れて取り組む必要があります。

 

3.日本電産、報酬委員会を設置

【注目ポイント(記事一部引用)】
日本電産は8日、役員報酬などを審議し取締役会に答申する報酬委員会を設置したと発表した。設置は6日付。取締役会の諮問に応じて役員報酬の基本方針や報酬体系などを議論する。委員の過半数を社外取締役から選出する。

【コメント】
率直な感想として、今まで報酬委員会が設置されていなかったということに驚きました。有名な大企業であっても、実は報酬委員会を設置していない例はまだまだあります。有名なところでは、NTTドコモも指名委員会・報酬委員会ともに未設置のまま、NTTによる買収が行われ完全子会社化となりました。次期コーポレートガバナンスコードの改訂では、独立性の高い指名委員会・報酬委員会の設置と取り組みの充実がコードに盛り込まれる予定ですが、これを機にさらに社外取締役を中心とした委員会の設置が進みそうです。