コーポレート・ガバナンスニュース(2021/2/8)
本日は、以下の記事について取り上げます。
1.「環境」知る取締役どこに
2.「東京製綱、経営再構築が必要」 TOB巡り日鉄副社長
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1.「環境」知る取締役どこに
【注目ポイント(記事一部引用)】
少し前に参加した経済人会合のテレビ会議で、ある大企業の元経営者が思いがけない話題を持ち出した。
自身が関わった調査で気候変動の自社への影響を把握していた取締役はわずか7%だったという。参加者は息をのんだが驚くべきことではない。
【コメント】
記事の中で報じられていますが、ニューヨーク大学の調べによると、アメリカの大手100社の取締役1188人の経歴からは、気候変動に関する専門知識を持っていたのは3人(全体の0.2%)のみであり、環境関連で何らかの知見を備えた人に枠を広げても6%にとどまるとのことです。これだけ気候変動に関する株主・投資家の関心が高まると、こうした分野の専門性を備えた取締役が1名も存在しなければ、その企業の取締役会は有効な議論も方針の決定もできないのではないでしょうか。一昔前は、こうした専門性を代表するものとしてITやデジタルなどが挙げられていましたが、現在では多くの企業の取締役会で、最低1名はこれらの分野への知見や専門性を持つ取締役が存在しています。
気候変動だけでなくても良いのですが、最低限ESG関連の専門性を備えた人材を1名は、取締役に加える方向で検討するべきだと思います。
2.「東京製綱、経営再構築が必要」 TOB巡り日鉄副社長
【注目ポイント(記事一部引用)】
日本製鉄の宮本勝弘副社長は5日の決算会見で東京製綱に対して実施中のTOB(株式公開買い付け)について「企業価値を高めるために経営体制の再構築が必要だ」と語った。
【コメント】
日本製鉄による東京製綱の敵対的TOBに関しては、企業価値を高めるために、現在の東京製綱の経営体制と取締役会の刷新が目的のようです。東京製綱の田中重人会長に関して、近年同社の業績が芳しくないにも拘わらず、2001年以降、20年間にわたり代表を務め続けており、これが適切さを欠いていると指摘されています。また、9人の取締役のうち2名の社外取締役も独立性・多様性を欠いており、経営陣の監督機能を果たしていないとしています。
事の是非はともかく、こうした例は、何も東京製綱に限らず、まだまだ日本企業には大小様々存在しますが、いよいよこうした状況も大きく変わるように思います。
従来日本企業の経営者は不祥事などが生じない限り、任期途中で解任されることはありませんでした。しかし、近年の事業会社による敵対的TOB案件をみていると、株主の立場で経営陣や取締役会の刷新を求める動機が目立っており、時代は確実に変化しています。今後も特に大企業による上場子会社などへの敵対的TOBは増えるでしょう。