コーポレート・ガバナンスニュース(2021/1/26)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.JSR、社外取に物言う株主 米バリューアクトから

2.ゴーン元会長「No way」 報酬に「社外の目」導入巡り

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1.JSR、社外取に物言う株主 米バリューアクトから

【注目ポイント(記事一部引用)】
JSRは25日、社外取締役候補にアクティビスト(物言う株主)として知られる運用会社、米バリューアクト・キャピタルのパートナー、ロバート・ヘイル氏を内定したと発表した。オリンパスの社外取締役として構造改革に取り組んできた実績を持つ同氏の知見などを生かし、企業価値の向上を目指す。

【コメント】
オリンパスに続き、JSRもアクティビストのバリューアクトから社外取締役を受け入れることが発表されました。ファンドの立場で、様々な企業の経営改善に取り組んだ実績と能力を期待して、構造改革をより一層進めたいというJSRの意向が窺えます。アクティビストであればどのような企業であっても良いという訳ではなく、あくまでファンドと派遣される人材次第ではありますが、こうした流れが進んでくると、企業側の意識としてもアクティビストの力を借りて構造改革に挑むという流れは一定程度増えるかもしれません。特に日本企業には社外取締役の有力な担い手が絶対数として少ないので、今後もこうしたケースは増えるでしょう。

 

2.ゴーン元会長「No way」 報酬に「社外の目」導入巡り

【注目ポイント(記事一部引用)】
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(66)の報酬過少記載事件の公判は、当時日産の中枢にいた元幹部らの証人尋問が続いている。事件に至る経緯として元幹部らが省みるのが企業統治(ガバナンス)の不全ぶりだ。経営に外部の目は入らず、周囲も「何を言っても無駄」と元会長の独裁に追随した状況が浮かび上がる。

【コメント】
ゴーン氏の報酬過少記載事件の公判において、日産のガバナンス不全を物語るエピソードが明らかとなっていますが、日産単独の問題ではなくこうした実態は日本企業の多くに共通しているということです。

過去の話ですが、2015年に日本でコーポレートガバナンスコードの適用が開始され、徐々に指名委員会や報酬委員会の設置を行う企業が増え始めたとき、最もその導入に後ろ向きだったのは、不思議なことにオーナー系の企業よりも、サラリーマン経営者が率いる伝統的な大企業でした。オーナー系の企業においては、創業オーナーや創業家一族が企業の持続的な成長に向けて、ガバナンスを企業価値を高めるための必須の経営基盤と捉えていたのに対し、伝統的な大企業では、「ガバナンス=経営の自由度を失わせる楔」という認識が強く、しぶしぶ取り組むという傾向が目立ちました。

その後、指名委員会や報酬委員会の設置は進み、社外取締役の数も増え、形式上のガバナンス強化はなされているかのようにみえます。しかし、実態としてどの程度ガバナンスが機能しているかは、企業によって相当な差があるように思います。
日産の事案を前にして、ガバナンス不全を糾弾することは簡単ですが、翻って自社の経営陣の報酬の決定プロセスを検証した時に、報酬委員会で形だけではなく本当に意味のある議論を出来ていると胸を張っていえる企業は、想像以上に少ないように思います。