コーポレート・ガバナンスニュース(2021/1/21)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.米物言う株主エリオット、香港拠点閉鎖 東京に一部移管

2.ESG投資で合従連衡を 年金など「オーナー」迫る

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1.米物言う株主エリオット、香港拠点閉鎖 東京に一部移管

【注目ポイント(記事一部引用)】
米著名アクティビスト(物言う株主)のエリオット・マネジメントが香港の拠点を閉鎖することが19日、明らかになった。人員と機能を英ロンドンと東京に移す。中国政府が「香港国家安全維持法」の下で香港の統制を強めるなか、米有力ファンドの移転は注目を集めそうだ。

【コメント】
ソフトバンクグループなど、数多くの日本企業を投資対象とするアクティビストファンドのエリオットが香港拠点を閉鎖するとのことです。記事によると、日本を除く今後のアジアの投資はロンドンから行うとのことですが、従来から東京の投資チームが存在していたことから、これによって日本企業への投資活動が減退するとは考えにくいと思います。
こちらの記事によると、昨年のエリオットの投資パフォーマンスは過去10年間でも非常に高い成果を出したとのことです。欧米企業を対象としたアクティビスト活動から得られる投資リターンは、従来から比べるとその難易度が上がっていますが、日本企業は、ガバナンスや事業再編など、経営改善によって業績向上が期待できる余地がまだまだあり、今後もアクティビストによる投資は増えることが予想されます。

 

2.ESG投資で合従連衡を 年金など「オーナー」迫る

【注目ポイント(記事一部引用)】
英金融HSBCが気候変動対応について、運用会社など15社から株主提案を受けた。2021年にESG(環境・社会・ガバナンス)投資が一段と活発になることを予感させる動きだ。背景にあるのは「アセットオーナー」と呼ばれる年金基金や財団、政府系ファンドなど資金の出し手の姿勢だ。

【コメント】
HSBCが気候変動に関する株主提案を15社もの運用会社から受けていたというのは、欧米企業に対する強いESG投資意欲の表れと見ることができますが、日本企業にとっても他人事ではありません。
記事にもある通り、昨年の株主総会ではみずほフィナンシャルグループに対して、気候変動に関係する株主提案が日本企業では初めて提示されました。昨年9月に誕生した菅政権では、2050年までに2050年までに脱炭素社会を目指すという方針が示されており、恐らく今年の株主総会では、他の日本企業においても気候変動に関する株主提案が出てくるはずで、こうした動きが一般化する前に、自社の事業が気候変動にどのように影響を与えるかを分析し、どのような経営を目指すかを、経営レベルで議論しておく必要があります。あえて指摘するまでもありませんが、そうした議論の際に、取締役会にESGの観点から自社の事業の在り方を検討できる専門性をもった取締役が最低限1名は必要になってきます。