コーポレート・ガバナンスニュース(2021/1/15)
本日は、以下の記事について取り上げます。
1.3つの変革が日本を変える
2.インテルCEO交代 ヴイエムウェアから招聘、技術てこ入れ
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1.3つの変革が日本を変える
【注目ポイント(記事一部引用)】
ここ数年、日本企業の間では事業構造改革の動きが生まれており、新型コロナウイルス禍という「黒船」によって一気に表面化した。3つの変革、「脱炭素」「デジタル化」「事業再編」への意欲が高まっており、株式市場でも2021年の投資テーマと受け止められるだろう。
【コメント】
企業が自社の事業の成長性を吟味し、自社の持つ競争力を冷静に見極めると、場合によっては既存事業のビジネスモデルを変えていくことや、既存のビジネスよりもあらtなビジネスに成長の活路を見出すということは当然あってしかるべきです。ところが、日本企業においては事業再編は長らく課題とされながらその取り組みは不十分なまま長い期間が経ちました。その根本には外部から経営陣を律し、成長の実現に向けて果敢に取り組ませるための仕組みが長年不在であったという事実があります。つまり、日本企業の事業再編が遅々として進まなかった背景には、ガバナンスの機能不全が大きく影響しているといえます。事業再編は構造改革であり、既存の事業の在り方を見直す以上、大なり小なり痛みを伴うものです。そのため経営陣にとっては、取り組みの必要性は理解していても実際には本腰を入れて取り組むことに相応の勇気がいることでもあります。本来はこうした今後の自社の経営を左右する一大事ほど、取締役会で十分に侃々諤々議論することが求められますし、実のある議論を行うことを考えれば、最高の叡智を持ち合わせた経営のプロが取締役会に揃っている必要があるのは当然のことです。このように考えると、数合わせの社外取締役や形式的に多様性を備えているか否かは、本来の取締役会のあるべき姿を考えることとは、程遠い議論であることがわかると思います。
今春のコーポレートガバナンスコードの改訂では、取締役の要件を示すスキルマトリックスの公開を求める内容が追加される可能性が報じられています。近年、スキルマトリックスの公開数は増加しており、筆者としても対外的に公表が進むことはガバナンスの強化の観点からも良いことだと考えています。しかし、スキルマトリックスそのものがどうこうというよりも、スキルマトリックスで示される要件を、なぜ必要と考えるかを、経営陣や取締役会が真剣に議論し、対外的に発信することの方がより重要であると考えます。くれぐれも現在の取締役構成を可視化するためだけの、アリバイ作り的なスキルマトリックスの公表とならないようにして頂きたいと思います。
2.インテルCEO交代 ヴイエムウェアから招聘、技術てこ入れ
【注目ポイント(記事一部引用)】
米インテルは13日、仮想化ソフト大手ヴイエムウェア最高経営責任者(CEO)のパット・ゲルシンガー氏をCEOとして招聘(しょうへい)すると発表した。ゲルシンガー氏はインテルの元最高技術責任者(CTO)で約12年ぶりの復帰となる。生産技術の停滞などを巡り株主からの圧力が高まるなか、技術と社内に詳しい出戻り人材に会社のかじ取りを託す。
【コメント】
今回のインテルのCEOサクセッションの取り組みに見られるように、元経営幹部を呼び戻すというのは、特に技術面と自社の社内事情に精通した人材を必要とするハイテク企業や製造業で度々見られますが、CEOサクセッションとしては稀なケースといえるでしょう。競合のエヌビディアとの競争の激化、特に技術面からの経営の立て直しが求められるインテルとしては、元CTOで社内事情と技術面のどちらにも精通しているゲルシンガー氏は改革の担い手として最適な人物と見定めたのだと思います。アクティビストのサード・ポイントからの経営改善圧力も強まっている同社の経営環境は今後も当面厳しい状況が続くと思われますが、新CEOの下、どのように新たな成長戦略を描くかに注目が集まります。