コーポレート・ガバナンスニュース(2021/1/18)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.社外役員 新興500社が争奪

2.1兆円企業トップの報酬、9887万円 6年ぶり減

※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します

 

1.社外役員 新興500社が争奪

【注目ポイント(記事一部引用)】
社外役員や監査役といったガバナンス人材の確保に悩むスタートアップが増えている。上場を目指すスタートアップが増え、金融庁などが定める企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を見据えて体制を整えるためだ。成長の早いスタートアップのガバナンスを担える人材供給には限りがあり、適切な人材探しを支援するサービスも求められている。

【コメント】
コーポレートガバナンスコードの適用が開始された2015年から現在に至るまで、東証1部上場企業であっても社外取締役の候補者探しは難航しています。資金力や知名度に乏しいスタートアップ企業であれば、こうした事態はより深刻さを増しているはずです。

ところで、記事に名前の出てくる女性社外取締役の方は、公開情報をみると2021年1月現在で、既に6社の社外取締役を兼務しています。どれだけ個人として優秀であったとしてもこれだけの社外取締役の兼務を行い、且つ本業もある状態で、果たして株主の代理人として、公開企業の社外取締役の役割を果たせるのでしょうか。

社外取締役の在り方に関する実務指針で示されているように、ただでさえ社外取締役が果たすべき役割は従来よりも大きくなっています。昨年の株主総会でも社外取締役の選任を巡って、会社側と株主側が対立したケースがあるなど、以前のように会社側の選任案がそのまま通るという状況でもなくなりつつあります。場合によっては、兼務数があまりに多い社外取締役について取締役の選任に反対されるケースが今後出てこないとも限りません。

 

2.1兆円企業トップの報酬、9887万円 6年ぶり減

【注目ポイント(記事一部引用)】
大企業のトップが受け取る報酬額が6年ぶりに減少に転じた。デロイトトーマツグループと三井住友信託銀行が公表した「役員報酬サーベイ(2020年度版)」によると、大企業の20年の社長報酬額(中央値)は9887万円と前年を0.6%下回った。前年まで全体を押し上げてきた変動報酬の導入が一巡したほか、新型コロナウイルス禍で報酬の減額などが相次いだことが響いた。

【コメント】
弊社に依頼のあるコーポレートガバナンス関連のコンサルティングは、昨年では

1.社長を含む経営陣・経営幹部の後継者計画の策定
2.   役員報酬制度の設計
3.   取締役会の強化・社外取締役の要件の策定
4.   指名・報酬委員会の設置・運営支援

がありました。

このうち、実は最も数が多かったのが役員報酬制度の設計と指名・報酬委員会の設置・運営支援で、いずれも依頼企業は東証1部上場企業です。

記事にあるように株式報酬を含む業績連動報酬の導入が一巡しているというのは、あくまで一部の大企業の話であって、大多数はまだまだこれからというのが筆者が日々様々な企業の方々とやり取りをしている中で感じる現場感です。

指名委員会や報酬委員会の設置状況も、昨年の東証の調査結果によると東証1部上場企業であってもまだそれぞれ60%程度の設置に留まっています。中にはNTTドコモのように、著名大企業であっても設置をしていない例もありました。

また仮に委員会を設けていても形ばかりの設置に留まり、実のある議論が出来ている企業は思いの外少ないのが実態であり、既に幾つかの企業では、ブラックボックス化している委員会の機能不全によって、重大なガバナンス上のリスクが顕在化してしまっている企業も出始めています。残念ながら、数年のうちに指名・報酬委員会を舞台とした企業不祥事も少なからず出てくると思います。