コーポレート・ガバナンスニュース(2020/10/7)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

  1. 「親子上場」解消急ピッチ 今年度15社減へ 統治や経営効率、全体最適目指す
  2. 黒人の取締役はなぜこれほどまでに少ないのか

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1.「親子上場」解消急ピッチ 今年度15社減へ 統治や経営効率、全体最適目指す

【注目ポイント(記事一部引用)】
親会社とその子会社がともに上場する「親子上場」を解消する機運が高まっている。2020年度は上場子会社が少なくとも15社減る見通しだ。NTTがNTTドコモを完全子会社にするなど大がかりなグループ再編が相次ぐ。企業統治の足かせになりかねない親子上場に対する市場の圧力も強まっており、親子関係の見直しが広がる可能性がありそうだ。

【コメント】
日本企業に、親子上場に該当する企業が多いのは、事業戦略上の合理性よりも上場企業としての信頼が、採用や資金調達、取引関係等にとってプラスに働いていたという面が主な理由です。
現在のように資本コストを意識した経営を資本市場から強く求められていることや、自社を取り巻く事業の競争環境が激化する事態に直面すると、グループの全体最適と事業ポートフォリオの組み換えがいよいよ避けて通れない問題となっている、というのが、多くの日本企業の現状だと思われます。
結果的に、NTTがNTTドコモを完全子会社化することや日立製作所が日立化成を売却することのように、グループ再編と親子上場は、今後も特に大企業を中心に進むはずです。その過程で、親子上場の数自体は急速に減っていくと考えられます。

 

2. 黒人の取締役はなぜこれほどまでに少ないのか

【注目ポイント(記事一部引用)】
多様性が組織のパフォーマンスを高めることはいくつもの研究で証明されているにもかかわらず、米国企業の取締役会には黒人の数があまりに少ない。制度的人種差別の解消が求められるいま、この現状を見過ごすわけにはいかない。本稿では、筆者らが実施した綿密な調査に基づき、何が黒人取締役の誕生を妨げるのか、その要因が明らかにされる。また、取締役会の多様性が組織にいかなる恩恵をもたらすのか、取締役会を変革するために何をすべきかを示す。

【コメント】
先日こちらの記事で取締役のスキルマトリックスについて取り上げました。スキルマトリックスで示される情報をみると、日本企業と海外企業ではその項目が異なります。前者は専門性やスキル、性別に関する項目がそのほとんどを占めているのに対して、後者の場合は、専門性やスキル・性別だけでなく、出身地域・国籍・母国語・人種などもカバーされることが一般的です。

グローバル企業は、当然対象としている市場はグローバルになり、その中には多種多様な人々が存在します。そのため、合理的な説明がなく、特定の属性が欠けていることに対しては、厳しい視線が注がれます。今回のHBRの記事では黒人の取締役の有無について考察していますが、これは人種の問題だけでなく、多様性をどのように確保するかという観点でも非常に参考になる記事です。

以前、ある外国人社外取締役からは「60歳以上の日本人のプロパーの男性だけで構成される取締役会を外国人視点でみると、非常に奇異に映るだけでなく、この会社ではそれ以外の属性の人間は仲間として認めないと暗に伝えてしまっている。非常にもったいない話だ」と言われたことがあります。日本企業の取締役会の多様性のなさについては、ご指摘の通りで、これは企業の持続的な成長を実現するという観点からも、変えていかないといけません。

昨日の記事で、菅首相が「企業の管理職を念頭に「女性、外国人、中途採用者を含めた多様性の確保が望ましい」と述べた。」と伝えられています。多様性の確保を巡ってはその取り組みは長期化が予想されますが、日本においては、まずは女性、外国人、中途採用者からスタートするというのは悪くないと思います。