コーポレート・ガバナンスニュース(2020/9/11)

本日は、以下の3つの記事について取り上げます。

  1. 米シティ初の女性CEO 上位行に後れ、「多様性が力に」
  2. 不正会計、取締役の責任は 内向きの体質、改善急務
  3. 米国家安全保障局のトップだったアレクサンダー元将軍がアマゾンの取締役会に加わる

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1.米シティ初の女性CEO 上位行に後れ、「多様性が力に」

【注目ポイント(記事一部引用)】
米金融大手シティグループは10日、マイケル・コルバット最高経営責任者(CEO、60)の後任として、ジェーン・フレーザー社長(53)を指名すると発表した。同社は「選択と集中」に成功したものの、株価はライバルに見劣りする。多様性の強みを生かせるか。新たな成長戦略は米大手銀初の女性トップの手に託された。

【コメント】
シティの新CEOの指名については、外部からの招聘も検討されたようですが、最終的に内部昇格でフレーザー氏が就任することとなりました。米国の大手銀行では初の女性トップとのことです。日本と比べると段違いに女性の経営幹部の数が多い米国企業であっても女性のCEO就任はまだ限定的です。こちらの記事をみても、優れた女性CEOの数が少ないのは、そもそも登用が進んでいないからだという指摘があります。今回のフレーザー氏は、女性であるだけでなく、年齢も53歳と日本の社長就任年齢からするとだいぶ若い印象ですが、世界的には40代のCEO就任も珍しくありません。たとえば、スイスの大手製薬会社ノバルティスでは、2017年に当時41歳のナラシンハン氏がCEOに就任しています。それだけCEO職には、知力・体力ともに高いレベルが求められるということです。

 

2.不正会計、取締役の責任は 内向きの体質、改善急務

【注目ポイント(記事一部引用)】
企業の不正会計疑惑が発覚すると、監査役の役割を問う声がよく上がる。なぜ取締役は問われないのか。中国のコーヒーチェーン大手、瑞幸咖●(くちへんに非)(ラッキンコーヒー)のように、取締役はすぐに辞任するからだろう。だが、取締役の交代が効果的だと思っている人はいるだろうか。

【コメント】
「取締役会が経営陣に異議を唱え、粉飾を見抜く力を備えているか、投資家は注意深く検証する必要がある。社外取締役の選任では候補が高級官僚や一流機関の学者、博士号保有者などであっても慎重になるべきだ。重要なのは肩書ではなく、その会社の事業を本当に理解しているかどうかだ。」

記事では、海外の企業の取締役会を念頭に取締役会の役割や責任について語られていますが、上記については同じ指摘が日本企業の取締役会に対しても当てはまると考えます。先日公表した下記の解説記事でも触れていますが、社外取締役の選任はもはや上場企業においては当たり前の状態で、現在はその中身が問われています。多くの企業で、改めて相応しい取締役とはどのような人物なのか、そのための選任が本当に出来ているのだろうかを振り返る時期に来ているのではないでしょうか。

 

参考記事

<解説>独立社外取締役の選任状況と指名・報酬委員会の設置状況(2020年8月時点)

 

3.米国家安全保障局のトップだったアレクサンダー元将軍がアマゾンの取締役会に加わる

【注目ポイント(記事一部引用)】
Edward Snowden(エドワード・スノーデン)が米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)の違法な盗聴やデータ収集行為を大々的に暴露して世間にショックを与えたとき、Keith Alexander(キース・アレクサンダー)将軍は同局のトップだった。このたび、同氏がAmazon(アマゾン)の取締役に加わった。

【コメント】
Amazonが取締役会のメンバーとして、米国の国家安全保障局の元トップを招聘を決めました。日本的な感覚からすると軍事関係者を取締役メンバーに加えることに対して抵抗を感じるかもしれませんが、今回のアレクサンダー氏がそうであるように軍事関連の専門家は、最新のサイバーセキュリティや地政学リスクへの理解の深さなどに優れた人物が多いこともあり、海外では取締役会や経営メンバーに加えることは決して珍しくはありません。こうした人材の招聘も、取締役会としてどのようなスキルや専門性が必要かをきちんと理解していてはじめて実施できるので、やはり取締役に求める人材要件作りは、必須でしょう。