コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/19)

本日は、以下の3つの記事について取り上げます。

  1. 攻めのガバナンス 日本の「監査」が進む道
  2. ソニー株を大量売却 「物言う株主」米サード・ポイント
  3. 米年金、ESG投資に逆風 「利益」重視に反発も

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1.攻めのガバナンス 日本の「監査」が進む道

【注目ポイント(記事一部引用)】
国内市場の縮小やコロナ禍などの環境変化を迎え、「攻めのガバナンス」の重要性がますます高まっている。日本企業が適切なリスクをとり成長を続けるには「監査」の充実が不可欠。そのためには現状の日本の監査役制度を発展させれば良いのか、それともゆくゆくはより欧米に近い形にシフトしていくべきなのか。

【コメント】
記事に出てくる3人の識者に共通するのは、現在の監査が対象とする内容の変化、それに伴う役割の拡大です。特にコンプライアンス的なチェック機能だけでなく、先々を見据えてどのようなリスクが生じるか、それをどのようにコントロールするかという機能が求められています。仲浩史氏や小口俊朗氏が述べるように、わかりやすさだけを考えると監査は委員会に移行するのがベターではないかと思います。

 

2.ソニー株を大量売却 「物言う株主」米サード・ポイント

【注目ポイント(記事一部引用)】
ソニーに対して事業改革の提案を繰り返してきた投資ファンド、サード・ポイントが保有していたソニー株を2020年4~6月期中に大量に売却したことが17日、明らかになった。米当局に四半期ごとの開示資料を同日提出した。3月末時点では67万株(発行済み株式数で0.05%)を保有していたが、6月末時点では1万株以下に減らしたか、全部売却したとみられる。

【コメント】
ダニエル・ローブ率いるサード・ポイントが事実上、ソニーから完全撤退したようです。2013年以降、エンタメ部門の独立・株式上場や、ソニー・フィナンシャル・ホールディングス(SFH)株の売却を要求するなど、ソニーに対する事業構造改革を求め続けていました。ソニーはサード・ポイントの要求に真正面から応えることはほとんどなかったように思います。売却を求められていたSFHについては、逆に完全子会社化しました。ソニーがサード・ポイントの影響を限定的にし、うまく対処できたのは、業績の回復とその結果の株価の向上があってこそです。逆に業績が悪化し、株価も下がっていれば、多くの企業と同じくサード・ポイントは一気に攻勢をかけていたことでしょう。結果論ではありますが、ソニーはアクティビスト対応がうまくいった好事例の1つになりそうです。

 

 

3.米年金、ESG投資に逆風 「利益」重視に反発も

【注目ポイント(記事一部引用)】
米国で企業年金の受託者責任を定めたエリサ法の新規則案が波紋を呼んでいる。「年金運用では金銭的な利益のみを考慮すべきだ」とし、ESG(環境・社会・企業統治)投資を事実上、採用しにくくなる変更だからだ。11月に大統領選挙を控えトランプ政権によるエネルギー業界への配慮との見方もあり、運用業界からは戸惑いの声が上がっている。

【コメント】
ESG投資は、コロナ以前から重視されていましたが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって企業活動が大きく影響される中で、企業に対してはサステイナブルな経営が益々求められ、結果的にESG投資はより重視される傾向が強まっています。こうした経緯もあるので、米国政治の都合で、ESG投資の推進に歯止めがかかったとしても、一時的なことではないかと推察します。一方で、過去の米国の政権をみると、共和党政権(ブッシュJr・トランプ)はESG抑制型、民主党政権(オバマ)はESG推進型の傾向があるようです。米国の大統領選挙の結果も今後のESG投資の拡大スピードに影響を与える可能性はあります。