コーポレート・ガバナンスニュース(2020/8/18)

本日は、以下の記事について取り上げます。

  1. 関電の役員報酬補填 違反を認定
  2. 野村証券、従業員持ち株の管理システム  譲渡制限付き、使いやすく

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1.関電の役員報酬補填 違反を認定

【注目ポイント(記事一部引用)】
関西電力が東日本大震災後の経営不振で減額した役員報酬の一部を役員退任後に嘱託報酬などとして補填した問題で、関電の「コンプライアンス委員会」(委員長・中村直人弁護士)は17日、調査報告書を公表した。報告書は、2015年10月ごろに森詳介会長(当時)の指示で検討が始まったとし、森氏ら3人について取締役としての善管注意義務違反を認定した。

【コメント】
当時の会長自らが、報酬の減額が50%を超えた部分を役員退任後にカバーできないかどうかを、密かに指示し実行したとのことです。コンプライアンス違反というだけでなく、明らかに犯罪行為にあたるため、会社側が訴訟を検討するのは当然です。ところで、関西電力は例の金品受領問題の発覚以降、指名委員会等設置会社に移行するなど、ガバナンスの強化は待ったなしですが、本件も含めてまだまだ過去の不祥事案件は探せば出てきそうです。こちらの記事で、関西電力の会長に就任した榊原氏(元経団連会長)は2年以内に風土改革を実現するとしていますが、道のりは険しいと思います。

2.野村証券、従業員持ち株の管理システム  譲渡制限付き、使いやすく

【注目ポイント(記事一部引用)】
野村証券は17日、上場企業の従業員の持ち株会向けに新たな管理サービスの提供を始めると発表した。企業が従業員に対しインセンティブ(誘因)付けするために割り当てる譲渡制限付きの株式について、保有・売買管理のシステムを提供する。煩雑な株式割り当て後の管理事務を代行し企業の負担を軽減する。

【コメント】
記事で取り上げられている野村証券の新たなサービスは、譲渡制限付株式報酬を保有・売買管理を行うシステムとのことです。欧米では、こうした株式報酬の管理システムは様々なベンダーが開発・提供しており充実しています。中には、時価総額数百億円規模となるスタートアップ企業などもあり、ニッチでありながら将来の成長への期待が高い分野です。一方で、日本では日本企業の株式報酬の付与自体が限られていたこともあり、こうしたインフラが整備されていませんでした。譲渡制限付株式報酬に関するシステムだけでなく、例えば日本非居住者の役職員(例えば、海外拠点のエグゼクティブを務める外国人役員など)に対しても証券管理口座の管理の複雑さや事務手続き上の困難が理由で、ストックオプションや株式の付与が現状は難しく、ファントムストックのように、インセンティブプランの選択肢が限られているのが現状です。今後、ますます株式報酬の付与は増加することは間違いありませんが、併せてこうしたインフラの整備もより一層求められています。