コーポレート・ガバナンスニュース(2020/7/16)

本日は、以下の4つの記事について取り上げます。

  1. 議決権行使助言会社のISS、東芝の役員選任案に賛成
  2. 関電社長「ルールなかった」 社外取締役との情報共有で
  3. SEC 株主保有開示のルール変更を提案
  4. 米ブラックロック、53社の環境対応にノー エクソンなど

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1.議決権行使助言会社のISS、東芝の役員選任案に賛成

【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝が31日に開く株主総会を巡り、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が会社提案の取締役選任案に対し、「賛成」を推奨したことが15日、分かった。一方、投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントなど株主の出した取締役選任案にはすべて「反対」とした。東芝はこれら株主提案に反対すると表明していた。

【コメント】
米取締役の選任を巡って、複数の大株主であるアクティビストから株主提案を受けている東芝ですが、ISSが会社側提案の取締役選任案を賛成推奨したようです。直近では、取締役提案を行うエフィッシモに対して、新設のコンプライアンス有識者会議に参加するよう呼びかけるなど、今回の対立の「落としどころ」を探る東芝ですが、エフィッシモ側は取締役の選任を強く要望しており、7月31日に開催される株主総会での委任状争奪戦に発展しそうな情勢です。

2.関電社長「ルールなかった」 社外取締役との情報共有で

【注目ポイント(記事一部引用)】
関西電力の森本孝社長は15日までに日本経済新聞のインタビューに応じ、役員らによる金品受領問題について「社外取締役に情報を報告、説明するルールが今まではあまり定められていなかった」と述べた。今後は「しっかりと社内ルールを作る」とし、社外取との情報共有を深めることで統治改革を進め、自社の信頼回復を急ぐと強調した。

【コメント】
指名委員会等設置会社に移行し、大幅に社外取締役の権限を増やしつつある関西電力ですが、社長のインタビューの中では、社外取締役の活動をサポートするためにも「取締役会室」を設置し、体制強化を行っているとのことです。指名委員会等設置会社に限らずですが、社外取締役の関与を高め、取締役会や指名・報酬委員会での議論を充実したものにしようとすると、その活動を補佐する事務局機能がどうしても必要になります。できれば、専任の事務局が望ましいところですが、多くの企業はまだまだ兼務状態でしょう。事務局メンバーとしては、法務・経営企画・人事などの専門性を備えた人材が一通り揃うのが理想的ですが、そこまで人員を割けない、またそもそも指名・報酬委員会の運営経験が少ないという企業も少なくありません。弊社に依頼される業務の1つにこうした事務局活動のサポートがありますが、依頼の背景には、このような事情が存在します。

 

3.SEC 株主保有開示のルール変更を提案

【注目ポイント(記事一部引用)】
企業の最高経営責任者(CEO)は、いつの日か自分の解任や報酬の削減を求める可能性がある株主について、できるだけ多くのことを知りたいと考えている。ところが米証券取引委員会(SEC)は、企業側にできるだけ情報を提供したくないと考えているようだ。SECは10日、株式保有の開示基準を大幅に変更する案を公表した。

【コメント】
米国の証券日取引委員会による株式保有開示基準の変更案が認められた場合、アクティビストファンドの多くは従来の条件からは開示条件が緩和されることから、益々アクティビズムは活発になると予想されます。日本企業にとっても対岸の火事ではなく、ただでさえアクティビストの株主提案件数が過去最多となっている現状から、さらにその活動が活発になる要素が増えるのは色々な意味で脅威のはずです。

 

4.米ブラックロック、53社の環境対応にノー エクソンなど

【注目ポイント(記事一部引用)】
米資産運用最大手ブラックロックは地球温暖化防止などの環境対応を巡り、世界の大手企業53社の取り組みが不十分だと発表した。米石油大手のエクソン・モービルやシェブロンなどが含まれる。株主総会で会社側の取締役選任議案に反対したり、環境関連の株主提案に賛成したりした。

【コメント】
機関投資家としてのESG対応への強化の結果ではありますが、石油関連企業などはビジネスモデル自体の変更を求められるなど、待ったなしの改革に直面しています。先日、日本で初めての気候変動に関する株主提案がみずほフィナンシャルグループに対して行われましたが(結果は否決)、今後日本国内でも益々ESG関連の株主提案は増え、企業経営への影響力を高めていくと思います。