コーポレート・ガバナンスニュース(2020/7/13)
本日は、以下の2つの記事について取り上げます。
- ソフトバンクGの統治改革、ビジョンファンドは対象外に
- 急拡大するESG投資で日本が抱える最大の課題
※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します
1.ソフトバンクGの統治改革、ビジョンファンドは対象外に
【注目ポイント(記事一部引用)】
ソフトバンクグループ(SBG)(9984.T)が、1000億ドルを運用する傘下のビジョン・ファンドに対する取締役会の監視を強める考えがないことが、複数の関係筋の話で明らかになった。物言う投資家として知られる米エリオット・マネジメントは同ファンドも含めたガバナンス(企業統治)強化を求めているが、これには応じない構えだ。
【コメント】
記事のタイトルだけを見ると、あたかもソフトバンクグループが投資の損失を重ねているビジョンファンドに対してガバナンス強化に消極的であるように読めます。実際はやや異なり、同社の大株主であるエリオット・マネジメントが求めている専門の委員会の設置に対して消極的なだけのようです。委員会設置の是非についてはよくわかりませんが、あれだけ巨額の投資損失を出した以上、投資決定基準や投資対象企業の選定プロセスは強化されるはずです。一方で、ソフトバンクグループのガバナンスの問題点は他にあるように思います。例えば、これまでユニクロの柳井会長やアリババのジャック・マー氏のような創業経営者タイプの社外取締役が(恐らく)担っていたはずの「孫会長の暴走のストッパー役」が、現在のSBGの取締役会には不在です。こうした「いざという局面で歯止めを掛けられること」はガバナンス上極めて重要ですが、現在の社外取締役の顔ぶれをみても孫会長を本当に止められる方々かどうか・・・。こちらの方がガバナンス上高いリスクとして考えられます。
2.急拡大するESG投資で日本が抱える最大の課題
【コメント】
こちらの記事の中でも書かれているように、ESG投資が進むこと自体は良いのですが、投資家がある企業がガバナンスに積極的に取り組んでいるかどうかを出来る限り効率的に判断しようとすると、「社外取締役の人数」や「指名・報酬委員会の設置」など、どうしても形式上の取り組み具合で判断されることになり、その取り組みの具体性が見落とされがちです。過去を振り返っても、コーポレートガバナンスが先進的と評されていた企業で、実際には形式面でガバナンスを整えていたにすぎず、深刻な企業不祥事が進行していた事例は数多く存在します。本来は、企業が積極的に取り組みの具体的な情報開示を行い、優れた取り組みが行われている企業ほど高い評価を得られるようになることが望ましいのですが、現時点では企業側の情報開示も少なく、まだまだ道半ばといったところです。来年改定が予定されているコーポレートガバナンスコードで情報開示は強化されるはずですが、これをきっかけに企業側の情報開示姿勢に変化が生まれることを期待しています。