コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/27)
本日は、以下の3つの記事について取り上げます。
- 株主、企業に変革迫る コロナ後成長問う―ESG重視の動き・20年総会
- 天馬総会 創業家常務らの取締役選任否決
-
役員報酬 1億円以上、26日までに計357人が開示
※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します
1.株主、企業に変革迫る コロナ後成長問う―ESG重視の動き・20年総会
【注目ポイント(記事一部引用)】
2020年3月期決算企業の株主総会が26日、ピークを迎えた。新型コロナウイルス対策で来場株主は激減し、検温や時間制限など異例の措置が講じられた。総会ではコロナ後の成長戦略を問う投資家の姿が目立った。利益還元に加え、環境問題や社会貢献、企業統治を重視するESG投資の流れが強まっている。
【コメント】
3月期決算企業の今年の株主総会の開催ピーク日が終了しました。株主提案件数は過去最多を記録、そのうちアクティビストからの提案件数も過去最多となりました。以前のように予定調和ではなく、場合によっては会社側提案が否決されることもあり得る、緊張感を漂わせる株主総会というのは、ガバナンスの健全性の現れとして評価されるべきでしょう。記事にもあるように、日本国内でもESGに関連するテーマが株主総会の場でも取り上げられる機会が増えてきています。現在のように先行き不透明な状況だからこそ、中長期の企業価値向上に向けた各社への取り組みに注目が集まります。今後、各社でESG関連の取り組みはこれまで以上に推進されると思いますが、中でも取締役の選任や社外取締役の要件など、コーポレートガバナンス関連の取り組みはより活発になると予想しています。
2. 天馬総会 創業家常務らの取締役選任否決
【注目ポイント(記事一部引用)】
プラスチック製造の天馬が26日開いた定時株主総会で、会社提案の議案のうち創業家出身で常務の金田宏氏ら3人の取締役選任が否決された。同社の監査等委員会が6月、2019年に発覚したベトナムでの贈賄事件や他社への増資を巡り、法令順守や内部統制の観点で取締役として不適切としていた。
【コメント】
取締役の選任を巡って創業家同士が対立していた天馬ですが、26日に開催された株主総会は異例の結果となりました。会社側提案の8人の取締役候補者のうち、創業家出身で社長候補であった金田常務を含む3名が否決、その他の5名が選任されました。一方で同じく創業家出身の元名誉会長司治氏が提出していた取締役候補者は全員が否決されました。結果だけみると会社側が勝利しているようにも見えますが、通常株主総会では会社側提案が承認されることが多く、さらに創業家同士の影響力の保持という観点でみると元名誉会長の司氏が勝ったようにも見えます。なお、総会後に開いた取締役会で現社長の藤野氏が退任し、代わりに新任の取締役である広野裕彦氏が社長に就任することを決定したとのことです。
3.役員報酬 1億円以上、26日までに計357人が開示
【注目ポイント(記事一部引用)】
6月26日17時までに、2020年3月期決算の有価証券報告書の提出は652社が確認され、累計1,713社になった。26日に報酬額1億円以上の個別開示を行ったのは68社で、人数は141人だった。
【コメント】
役員報酬の個別情報開示情報によると、トップはソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長の21億円とのことです。その他、TOP10の顔ぶれをみると外国人が7名となっており、経営陣のグローバル化に伴う高額報酬の実現という説明が成り立ちそうです。役員報酬の高額化は優秀人材の獲得・リテンションには避けて通れませんが、やみくもに報酬を上げるのではなく、短期・中長期の企業業績と連動していることが重要になります。また、役員報酬の決定基準の開示や決定プロセスにおいてどのような議論があったのかは、報酬の妥当性を検証するためにも重要です。これらの報酬関連情報の開示はまだその多くが限定されていますが、報酬水準が諸外国並みに上がっていくのであれば、開示情報の対象も同様に拡大すべきと思います。