コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/26)

本日は、以下の5つの記事について取り上げます。

  1. 孫社長「襟を正す」、ガバナンス強化 ソフトバンクG
  2. 株主総会シーズン到来、コロナ禍で「物言う株主」が優しくなった?
  3. 女性取締役の起用、主要企業の8割に上昇 今総会で
  4. オリンパス株急伸 「カイシャ」の進化にうなる投資家
  5. 関電、株主の不信根深く 総会、金品受領問題へ批判続々

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1. 孫社長「襟を正す」、ガバナンス強化 ソフトバンクG

【注目ポイント(記事一部引用)】
ソフトバンクグループ(SBG)は25日、都内で株主総会を開いた。焦点となったのは企業統治(コーポレートガバナンス)の強化だ。巨額赤字につながった投資の意思決定や管理について株主から質問が投げかけられ、孫正義会長兼社長は「襟を正す」と応じた。

【コメント】
ソフトバンクグループが公表している最新のコーポレートガバナンス報告書によると、同社では第3者機関による取締役会評価を行い、その結果、「複雑な投資案件等について、取締役会における審議時間をさらに確保する必要があること」が指摘されています。これは、今回の総会でも議論の焦点になったビジョンファンドの投資案件の決定プロセスの透明化などに課題がある点を指していますが、早急に見直しが必要です。また、同報告書には、「経営陣幹部および子会社の役職員の選解任や報酬等に関する議論を行うため、指名委員会や報酬委員会の設置を検討する必要があることが指摘されました」とあるように指名・報酬委員会の設置と運営も今後の課題として挙げられています。特に投資先企業の役職員の選解任や報酬決定については透明性と意思決定について、孫社長の意向だけでなく、オープンな場で議論していく必要があるでしょう。

 

2.株主総会シーズン到来、コロナ禍で「物言う株主」が優しくなった?

【注目ポイント(記事一部引用)】
3月期決算企業の株主総会シーズンが到来した。総会では近年、株主還元などを強く迫るアクティビスト(物言う株主)の存在が際立つが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い、彼らの要求に変化が生じている。日本株を得意とする海外アクティビストらの実情に迫った。

【コメント】
今年の株主総会におけるアクティビストの提案内容は、従来の株主還元型からガバナンス改善型へ変化しているのが特徴です。ガバナンス改善の中身をみると取締役の選任に関わる提案が多く、今後取締役の選任基準や候補者の人材要件などの議論が活発になると思います。これらの点は、伝統的な日本企業の人事権に大きな影響を及ぼします。そのため、経営陣にとっては、ある意味で株主還元策以上に厳しい要求とも捉えることができるでしょう。その意味において、記事のタイトルはややミスリードな気もします。

 

3.女性取締役の起用、主要企業の8割に上昇 今総会で

【注目ポイント(記事一部引用)】
取締役に女性を登用する上場企業が一段と増えそうだ。3月期決算の主要企業のうち、今年の株主総会後に女性取締役を置く割合は8割強と、昨年の7割から高まる見通し。海外投資家を中心に取締役会メンバーの多様化を求める声が強まっているのに応える。今後は取締役会に占める女性比率の向上が課題となりそうだ。

【コメント】
社外取締役の選任がいつの間にか当たり前のこととなったように、女性取締役の選任も上場企業であれば普通のこととなりつつあります。ただし、単に数を揃えるだけでなく、質が重要であることは当然です。取締役会の多様性を確保するという観点でジェンダーの多様性は重要ですが、それ以外にも多様性を示す属性や要件は様々です。形式以上に実質的にどのような多様性を重視するかという点で、取締役会の構成を検討する必要があります。

4.オリンパス株急伸 「カイシャ」の進化にうなる投資家

【注目ポイント(記事一部引用)】
25日の東京株式市場で、オリンパス株が前日比で一時187円(9.7%)高の2105円50銭に急伸し、2月7日に付けた株式分割考慮後の上場来高値(2148円)に接近した。デジタルカメラなどを手掛ける映像事業を投資ファンドに売却すると24日に発表。不採算事業撤退に素早く踏み切ったことを評価した買いが集まった。米有力アクティビスト(物言う株主)関係者を取締役に迎え進化した「カイシャ」の出した結果は、日本株に対する海外投資家の見直しに寄与する可能性が高い。

【コメント】
事業ポートフォリオの見直しという日本企業の苦手な取組みに対して、オリンパスの意思決定の迅速さに注目が集まっています。記事の中では、その背景に2019年に選任されたアクティビストのバリューアクト出身の社外取締役の存在を示唆しています。実際のところはわかりませんが、その効果を早速示しているという点で市場からも好感されているようです。こうした構造改革は痛みも伴う分、伝統的な大企業ほど意思決定が遅れがちでしたが、オリンパスの事例を見て、同様の取り組みを検討する企業は今後増えるかもしれません。

 

5.関電、株主の不信根深く 総会、金品受領問題へ批判続々

【注目ポイント(記事一部引用)】
関西電力は25日、役員らによる金品受領問題が発覚してから初めての定時株主総会を開き、指名委員会等設置会社への移行や、新会長に内定していた榊原定征前経団連会長を取締役に迎える人事案の承認を得た。ただ株主の不信感や疑念は深く、「内向き体質」からの脱却が問われている。

【コメント】
金品の不正受領問題発覚後、初めての株主総会を開いた関西電力ですが、株主からは厳しい意見が相次ぎました。今後、指名委員会等設置会社へと機関設計を変更する同社ですが、以前以下のブログ(参関連記事を参照)でも述べたように、単に形式を変えるだけでなく、実質面でどのようにガバナンスを強化するかが問われています。

【関連記事】

指名委員会等設置会社に移行すれば不祥事は防げるのか