コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/24)

本日は、以下の4つの記事について取り上げます。

  1. 株主還元「100%超」の奇策も、天馬の委任状争奪戦は佳境に
  2. オリンパス、デジカメなど映像事業をファンドに売却

  3. JR九州、総会で信任 コロナ下、業績改善へ
  4. 役員報酬削減、コロナ禍でもまだ「4社に1社」の訳

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1. 株主還元「100%超」の奇策も、天馬の委任状争奪戦は佳境に

【注目ポイント(記事一部引用)】
創業家同士が対立して委任状争奪戦を繰り広げているプラスチック製品製造の天馬(東証1部上場)。定款が定める取締役の人数の上限である9人の枠を巡り、現経営陣と創業者の司治・前名誉会長が、それぞれ8人の取締役候補を提案している。同社は6月26日に株主総会を開催する予定で、なりふり構わぬ激しい闘いは、佳境を迎えている。

【コメント】
既に当ブログでも何度も取り上げている天馬の創業家同士の取締役選任を巡る事案ですが、いよいよ6月26日の株主総会を迎えます。どちらが勝利しても新経営陣が取り組む最重要施策の一つは、コーポレートガバナンスの強化です。経営トップとそれ以外の取締役の選任に関する基準の策定、選定プロセスの透明性などやるべきことは山積しています。具体的に何に対して取り組むべきなのかは、後日、別の記事で詳細を解説していく予定です。

 

2.オリンパス、デジカメなど映像事業をファンドに売却

【注目ポイント(記事一部引用)】
オリンパスは24日、デジタルカメラを中心とする映像事業を投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP、東京・千代田)に売却すると発表した。映像事業を分社化し、関連する人員や資産を移管したうえでJIPに譲渡する。9月末までに正式に契約を締結し、年内に売却を完了させる予定。売却額は明らかにしていない。

【コメント】
オリンパスの映像事業売却のニュースは、特にカメラ好きの方にとっては大きな衝撃だと思います。しかし、事業としてみると昨年までで3期連続営業損失を計上していたことから、以前から撤退のタイミングを窺っていたのだと推察します。オリンパスは2019年にアクティビストのバリューアクト・キャピタル・マネジメントから取締役を受け入れ構造改革の推進を表明していましたが、その取り組みの一つがこのニュースにつながったとも考えられます。外圧をうまく使いながら、企業変革を進めている一つの事例(成功するかどうかはこれから次第ですが)として、本件を巡って取締役会でどのような議論が行われたか、気になるところです。

 

3.JR九州、総会で信任 コロナ下、業績改善へ

【注目ポイント(記事一部引用)】
JR九州は23日、福岡市で株主総会を開いた。大株主となっている米投資ファンド、ファーツリー・パートナーズが提案していた取締役選任など、全ての株主提案は否決された。会社提案の信任を得た経営陣は、駅ビル開発や不採算路線の見直しなど多くの課題に取り組みながら、新型コロナウイルス下での業績改善を目指すことになる。

【コメント】
昨年に続き、会社側提案とファンド側提案が対立していたJR九州ですが、今年も会社側提案が株主からの信任を得る結果となりました。記事にあるように、昨年以降、JR九州とファーツリー・パートナーズの双方で対話を積み重ねてきたようですが、ファーツリーの担当者が退職したことで、再び対決モードに至ったのでしょうか。この辺りの背景はわかりませんが、いずれにしてもファーツリー・パートナーズがJR九州の株式を保有し続け大株主として存在するのであれば、今後も双方のコミュニケーションが重要になります。今回は取締役の選任に関して意見対立が表面化したわけですが、JR九州の事案だけでなく、どのような取締役会を目指すか、そのための取締役の要件は何かという思想の部分が、取締役の選任を巡る対立の根本的な原因であることが多いです。今後企業と株主とのエンゲージメント活動においては、こうした取締役会や取締役に対する思想部分の重要性が高まっていくと思います。

4.役員報酬削減、コロナ禍でもまだ「4社に1社」の訳

【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルスの感染拡大は、企業業績と労使双方の給料や報酬をもむしばむ。業績の低迷を背景に、民間調査によれば、現時点で「4社に1社」が役員報酬の削減に踏み切った。コロナとの戦いは長期戦が必至なだけに、この数は今後膨らむ可能性が高い。

【コメント】
役員報酬の減額に至る背景は企業によって様々ですが、一般には業績低迷の経営責任や従業員との連帯を示すといった理由が考えられます。未曽有の景気後退局面にある現在の状態を考えると、記事のタイトルにあるように、「まだ4分の1程度の企業しか役員報酬の減額を表明していないの?」と考える気持ちは理解できます。しかし、仮にこの後、更に企業業績が悪化した場合、先に役員報酬の減額を表明しているとそれ以上の経営責任を示す方法が、経営陣の退任などしか存在しないということも企業側の念頭にはあると思います。そのため、多くの企業は現時点ではまだ様子見だと捉えた方が良いと思います。役員報酬の減額は「現段階で4分の1」であるものの、最終的には増加し、恐らく上場企業のうち半数程度は、減額に至るのではないでしょうか。