コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/23)

本日は、以下の5つの記事について取り上げます。

  1. 東芝に取締役3人選任要求 「物言う株主」エフィッシモ、社側は反対姿勢
  2. JR九州株主総会 取締役巡り対立 米ファンドが株主提案

  3. 6月総会「株主提案」最多54社 中長期の視点で企業統治重視
  4. 天馬の常務が反論「元名誉会長が秩序を乱した」
  5. コロナ禍でも底堅いESGファンド

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1. 東芝に取締役3人選任要求 「物言う株主」エフィッシモ、社側は反対姿勢

【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝は22日、7月31日開催予定の定時株主総会で、「物言う株主」として知られるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントから取締役3人の選任を要求する株主提案を受けたと発表した。東芝は今後、ガバナンス(企業統治)を強化し、業績を伸ばしていく上で「取締役構成は必要かつ十分な体制だ」と反対姿勢を表明している。

【コメント】
先日取締役会議長の小林氏の社外取締役退任が報じられた東芝が、大株主のエフィッシモ・キャピタルから取締役3名の選任を要望する株主提案を受けています。本当に今年の株主総会では取締役の選任に関する株主提案が多いのですが、東芝が本提案への反対理由として説明している「取締役構成」の考え方がまさに問われてます。以前から申し上げているように、取締役のスキルマトリックスを単に提示するだけでは不十分であり、その取締役の要件がなぜ重要だと考えるかという思想をしっかりと説明していくことが何より重要です。

 

2. JR九州株主総会 取締役巡り対立 米ファンドが株主提案

【注目ポイント(記事一部引用)】
JR九州は23日、定時株主総会を開く。大株主の米ファンド、ファーツリー・パートナーズが会社案とは別の取締役候補者の選任などを提案しており、昨年に引き続き対立する構図だ。ファンド案が他の株主からどこまで賛同を集めるのか注目される。

【コメント】
昨年に引き続きファンド側と会社側とで取締役候補者の選任等を巡って対立構造にあるJR九州ですが、今年は結果がどうなるか不透明なようです。昨年もファンド側の取締役候補者の提案は否決されたものの40%以上の賛成票を集めました。今年もファンドが他の株主への賛成を呼びかけており、議決権行使上限会社のISSがファンド側提案へ賛成推奨を行うなど追い風も吹いています。

 

3.6月総会「株主提案」最多54社 中長期の視点で企業統治重視

【注目ポイント(記事一部引用)】
6月開催の株主総会で「株主提案」を受けた企業が54社と、前年に並び過去最多だったことが分かった。新型コロナウイルスの影響で事業環境の先行きが不透明なことを映し、株主への短期的な利益還元の要求は強くない一方、中長期の成長に向けたガバナンス(企業統治)強化を重視する姿勢が目立つ。

【コメント】
今年の株主総会における株主提案が昨年と同じ最多件数であったことがわかりました。中でも従来の株主還元策重視型からガバナンス改善型や経営改善型へと提案内容にも変化があるようです。現在のように景気の先行き不透明感が増してくると、より中長期の企業価値創造に向けたESGを重視する投資家が増えているように、ガバナンスも中長期の企業の競争力という点で極めて重要な取組みです。既に総会後に向けて、ガバナンス改革を進める企業からの相談が弊社でも増えております。コーポレートガバナンスの改訂もそろそろ本格的に議論が始まると思いますが、引き続き企業側もガバナンス改革の取り組みは積極的に推進されると思います。

 

4. 天馬の常務が反論「元名誉会長が秩序を乱した」

【注目ポイント(記事一部引用)】
家庭用収納ケース「Fits」などの販売で知られる、樹脂製造中堅の天馬(東証1部上場)で委任状争奪戦が繰り広げられている。勝つのは会社側か、それとも株主側か。6月26日の株主総会で審判が下る。

【コメント】
天馬の一連の問題は、株主総会での委任状争奪戦に発展する見通しです。今回の会社側・株主側双方の提案内容はコーポレートガバナンス上、様々な論点があります。たとえば、大株主でアクティビストのダルトンインベストメンツの日本代表が取締役候補に入っている点も意見は様々でしょう。通常、アクティビストから取締役候補を受け入れる場合は、社外取締役としての選任が一般的ですが、今回は社内取締役(非常勤)としての選任のようです。非常勤とはいえ社内取締役ですから、仮に非執行という立場であっても立場的には社外取締役よりも経営への関与度は高まりますし、全ての株主の利益に繋がる行動が求められます。アクティビストファンドからの社内取締役が、自社(ファンド)の利益第一に動かないというのは、正直考えづらいと思います。この点、利益相反に繋がらないような仕組みや防止策をどのように取るのか、気になるところです。

 

5. コロナ禍でも底堅いESGファンド

【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルスの影響で大荒れの展開が続く2020年の金融市場で、ESG(環境・社会・企業統治)関連ファンドが底堅いパフォーマンスを見せている。コロナ禍の災いが転じて、ESG課題に積極的に取り組む企業が改めて評価される流れになったことが一因のようだ。

【コメント】
コロナ禍の災いが転じて、ESG課題に積極的に取り組む企業が改めて評価される流れとなっているようです。今回のコロナウィルスの影響により、特に企業が従業員にどのように対処しているかなどが働き方の問題と併せて浮き彫りになっています。テレワークの推進など、適切な労働環境の実現に前向きな企業ほど評価が高まるという傾向もありますが、特にESGのSの取り組みは機関投資家の評価でも重視されており、今後企業側の情報開示の工夫に注目が集まると予想されます。