コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/19)

本日は、以下の5つの記事について取り上げます。

  1. 役員報酬1億円以上開示、17日は1社2人増 2020年3月期決算 上場企業
  2. 取締役に女性起用を、海外投資家が迫る 株主総会で反対も

  3. ESG評価会社が乱立 欧米当局が聴取、規制も検討

  4. 東芝社外取・取締役会議長 小林氏が退任意向

  5. 駅探に突きつけられた「全役員クビ」、大株主が独自候補を提案

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1. 役員報酬1億円以上開示、17日は1社2人増 2020年3月期決算 上場企業

【注目ポイント(記事一部引用)】
6月17日17時までに、2020年3月期決算の有価証券報告書の提出が確認されたのは53社だった。
このうち、役員報酬1億円以上を開示したのは、インテル向けICパッケージ基板製造が好調なイビデン1社で、開示人数は2人だった。累計では5社・8人に増えた。

【コメント】
現時点での20年3月期決算の有価証券報告書の提出は出揃っていませんが、全体的には(実支給額ではなく)制度上の役員報酬の報酬水準は上昇傾向です。これは、主には業績連動報酬、特に株式報酬によるものですが、コロナウィルスによる業績悪化の要因を受けて、役員報酬の実支給額は今年は減額傾向にあります。企業業績の悪化は、多くの企業でこれから表面化していくると思いますが、どの程度役員報酬に影響を与えるか、特に現時点では多くの企業で手付かずの業績連動報酬の削減にまで踏み切る企業がどの程度出るか、注目しています。

 

2. 取締役に女性起用を、海外投資家が迫る 株主総会で反対も

【注目ポイント(記事一部引用)】
海外の機関投資家が企業に対し、取締役に女性を起用するよう促している。女性がいない場合は社長の選任に反対するなど、強い姿勢を示す投資家もでてきた。政府も企業統治指針などで女性活躍を促すが、主要企業でも女性を起用するのは6割にとどまる。来週以降本格化する株主総会の際にも、説明が求められそうだ。

【コメント】
コーポレートガバナンスコードでも定めがあるように、取締役会は、そのの多様性確保が求めらています。女性取締役の登用が重視される背景には、多様性をどのように確保するかという企業の考えが問われていると考えるべきでしょう。以前から、女性だからといって取締役に適任かどうかは関係ないという批判があり、それはその通りではありますが、一方で日本の大企業の取締役会が「中年以上の日本人男性」のみで構成されているケースがほとんどであり、極めて同質的なメンバーで構成されていました。人材の多様性は、様々な要素で検討されるべきですが、言語の問題もあっていきなり外国人取締役を登用することを目指すよりも、まずは日本人の女性取締役からというのは、決して無謀な話ではありません。しかし、多くの企業で女性取締役の登用=「女性の社外取締役」の登用しか選択肢がないのは、寂しい限りです。また、この点は人材育成の観点からも望ましくありません。人材の登用は準備に時間が掛かり、必然的に中長期の取り組みとなります。単に目先の女性取締役の登用という問題以上に、各企業が組織の中でどのように人材の多様性を確保し、競争力を高めていく方針なのかが、問われています。

 

3. ESG評価会社が乱立 欧米当局が聴取、規制も検討

【注目ポイント(記事一部引用)】
ESG(環境・社会・企業統治)を重視した企業への投資が広がるなか、ESGの評価会社が乱立することへの懸念が強まっている。同じ企業でも評価に大きな格差がある場合も目立つ。欧米の証券規制当局は客観的な評価基準の設定に向けて対策に動き出した。

【コメント】
機関投資家のESG重視の投資方針により、評価会社自体も乱立、その数は600社以上にもなるとのことです。欧米の当局が今後一定の規制を掛ける方針とも伝えられますが、ユーザーである機関投資家と評価をされる側である発行体側が、その評価結果をどのように判断するかにかかっているように思います。これだけの数の評価機関が乱立しているということは、その評価の質も恐らく様々でしょう。全ての評価を検証することは難しいと思いますが、妥当性のある評価を行う評価機関が最終的には生き残るのではないでしょうか。

 

4. 東芝社外取・取締役会議長 小林氏が退任意向

【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝の社外取締役で取締役会議長を務める小林喜光氏が退任の意向を固めたことが18日、わかった。東芝の経営危機のきっかけとなった不正会計問題が発覚した2015年から社外取を務めてきたが、再建に一定のめどがついたと判断して退任するもようだ。後任には中外製薬の永山治名誉会長が就く方向で調整しており、7月以降に開く株主総会で正式決定する。

【コメント】
1企業の社外取締役の退任がニュースになるというのは、あまり例はありませんが、それだけ東芝と小林氏への注目度が高いということでしょう。後任は中外製薬の永山治名誉会長と報じられています。永山氏はソニーの取締役会議長を経験されたこともあり、経歴からはグローバル企業の取締役会をリードするには申し分ないように思えます。東芝は昨年の株主総会で12人中7名の新任取締役が選任されており、取締役会の編成を見直している最中にあったといえるかもしれません。引き続き、東芝の大株主には複数のアクティビストも存在するため、取締役会の運営のみならず、株主・投資家対応も含めて永山氏が取締役会議長として果たす役割は極めて大きくなると思います。

 

5. 駅探に突きつけられた「全役員クビ」、大株主が独自候補を提案

注目ポイント(記事一部引用)】
東証マザーズ上場で乗り換え案内サービスを手掛ける駅探が、大株主に全役員の解任を迫られている。大株主は駅探の取締役が社員にパワーハラスメント(パワハラ)を行ったとし、独自の取締役候補を提案。駅探は「事業に知見がない取締役では経営が混乱する」として対決姿勢を強めている。

【コメント】
この問題については過去2回、その経緯を取り上げました(下記参照)。最終的にはCEホールディングス以外の株主が、駅探の企業価値向上の担い手としてCEホールディングス・駅探のどちらに軍配を上げるかですが、今のところISSの推奨方針にもある通り、駅探側の提案が優勢なようです。しかし、仮に駅探側が株主総会で勝利したとしても今後もCEホールディングスは大株主として存在し続けるため、問題の抜本的な解決には遠いでしょう。

 

【参考記事】

駅探に大株主が全取締役の交代を要求

(続報)駅探に大株主が全取締役の交代を要求