コーポレート・ガバナンスニュース(2020/5/27)
本日は、以下の6つについて取り上げます。
- テレ朝HD、米投資ファンドの自社株買い提案に反対を表明
- 三陽商会、見えぬ再建の道筋 総会でファンド案は否決
- コロワイド、経営陣刷新反対の大戸屋に反論
- 株主提案、アマゾンなど米ネット大手揺らす ESG重視
- 株主総会にもESGの風 「女性」「気候」に重点
- 関電、社長ら6人の報酬開示 19年度最高5900万円
【注目ポイント(記事一部引用)】
テレビ朝日ホールディングス(9409)は26日、株主である米投資ファンドのRMBキャピタル(イリノイ州)が、6月26日に予定する株主総会の議案として提案する自社株買いについて、反対することを取締役会で決議したと発表した。同社は中長期の観点から現在の株主還元を策定・実行していることや、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により手元流動性の確保が重要課題であることが理由としている。
【コメント】
テレビ朝日がアクティビストファンドから自社株買いを要求されているとのこと。同様にアクティビストから様々な提案を受けているTV局にTBSがあります。こちらは保有不動産や大株主である東京エレクトロン株の売却を求められています。手元現金保有率が高い、または保有資産の有効利用が十分でないとみなされる可能性があるメディア企業は他にもあり、今後本件と同じようなケースが、他のメディア企業にも波及する可能性はあります。
【注目ポイント(記事一部引用)】
三陽商会が26日に開いた株主総会で「物言う株主」による経営陣の刷新案が否決され、会社側が出した人事案など5件の議案全てが可決された。業績が落ち込む中、会社側の再建計画が承認された格好だが、リストラ策が中心のため、本格的な成長に向けては不十分との見方が根強い。新型コロナウイルスを背景に15日にレナウンが法的整理に入るなど、アパレル業界を取り巻く環境は厳しく、再建の行方はなお見通せない。
【コメント】
アクティビスト側の人事刷新案が否決され、会社側の人事案などが可決しました。しかし、今後の成長に向けた方針や具体的な取組みは十分とはいえず、会社側の勝利とはほど遠い状況のようです。当面の時間稼ぎはできたかもしれませんが、今後もRMBは引き続き三陽商会に対して成長の道筋を示すよう迫るでしょうし、立て直しにかけられる時間はそれほど長くないかもしれません。同業のレナウンが法的整理に入るなど、アパレル業界全体が苦境に陥る中、三陽商会に注がれる株主の視線は、厳しさを増しています。
【注目ポイント(記事一部引用)】
定食店「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングス(HD)が自社の経営陣の刷新を求める株主提案に反対したことを巡り、株主提案した外食大手コロワイドが26日、経営陣刷新によるガバナンス体制の構築が不可欠とする見解を示した。大戸屋HDが新たに掲げた新業態の出店など成長戦略は業績低迷下では実現不透明と強調している。
【コメント】
コロワイドによる大戸屋への経営陣刷新要求ですが、対立構造が鮮明になっています。新型コロナウィルスによる未曽有の経済打撃を受けている両社の株主にとって、この事態は望ましくないでしょう。6月の株主総会での委任状争奪戦は不可避のように報じられていますが、総会での決着だけでなく、今後の成長への道筋をどのように描くかが、双方の株主の最大の関心事です。
【注目ポイント(記事一部引用)】
アマゾン・ドット・コムなど米ネット大手が5月下旬から相次いで株主総会を開く。今年も各社のガバナンス(企業統治)改革などを求める株主提案が数多く出された。投資家の間ではESG(環境・社会・企業統治)を重視し、提案に賛成する動きが広がる。多くの議決権を握る各社の創業経営者らも、「物言う株主」の声に耳を傾けざるを得なくなっている。
【コメント】
ネット企業だけでなく、先日取り上げたJPモルガンやエクソンモービルなど、米国企業の今年の株主総会ではESGのうち、EやSについての議論が活発になっています。実際の賛成可決まで至らなかったとしてもこうした株主提案に一定の賛成票が集まることは、企業に対して大きな影響力を発揮します。
【注目ポイント(記事一部引用)】
株主総会が6月から本格化する。企業統治改革の進展で機関投資家が日本企業に対する議決権行使基準を厳しくする動きを強めているが、今年はコロナ禍もあり、より長期目線で企業の持続可能性(サステナビリティー)に注目する投資家が増えている。関心はG(ガバナンス)からE(環境)やS(社会)に広がっている。
【コメント】
こちらもESG文脈ですが、日本企業の場合は、まだまだ諸外国の企業と比べてGの取り組みが十分とはいえません。コーポレートガバナンスコードを順守することや社外取締役の数を増やすといった外形的な取組みだけでなく、ガバナンスを強化することを通して、どのように企業をより成長させていくかという点が問われています。
【注目ポイント(記事一部引用)】
関西電力は26日、森本孝社長ら取締役6人について、2019年度の報酬を開示した。金額は4000万~5000万円台で、森本社長の5900万円が最も多かった。上場企業が個別開示を義務付けられている報酬1億円を下回る水準で氏名と報酬額を公表するのは異例。役員らによる金品受領問題からの信頼回復に向け、経営の透明性向上につなげる狙いだ。
【コメント】
個別報酬の開示を進んで行っている点はコーポレートガバナンスの強化という意味で、非常に良いことです。一方、今回の報酬情報を見た限りでは、報酬の水準やインセンティブの付与がまだまだ改善の余地があるように思います。関西電力という大企業の社長で、約6000万円という報酬額が高いか低いかという議論もありますが、何よりなぜこの金額なのか、また企業価値向上を促すために、報酬設計上どのような仕組みを設けているかなど、役員報酬に対する思想が見られないのが、残念です。今回役員報酬の個別情報開示を行ったことで、恐らく様々な反響があると思いますが、同社には是非役員報酬に対する会社としての考えを明示してほしいと思います。
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