(続報)駅探に大株主が全取締役の交代を要求
先日、こちらの記事にて、東証マザーズ上場企業で乗り換え案内等のサービスを手掛ける駅探が、同社の大株主(保有比率は約31%)であるCEホールディングスから取締役全員の交代要求を受けている件について取り上げました。
これに対する駅探の取締役会としての意見表明が本日リリースされました。事実関係について細部にわたって細かく反論していますが、特に重要な点について確認していきたいと思います。
(文字の強調等は筆者が追加、以下同)
駅探側の反論
当社定時株主総会に係る株主提案に対する当社取締役会の反対意見に関するお知らせ
本株主提案に対する当社取締役会の意見
提案株主は、「当社経営陣刷新の必要性」を標ぼうし、本株主提案として、当社の現任取締役を一切その候補者としない取締役選任議案を提案しています。すなわち、本株主提案において提案されている取締役候補者は、その全員(7名)が当社の経営に関与したことがなく、また、当社の主力事業に関する経営経験すらありません。
(中略)
すなわち、本株主提案は、株主の皆様に対し、当社の現経営陣と、当社の経営に関与したことも当社の主力事業に関する経営経験もない経営陣の、いずれの体制が当社にとって適切かという判断を迫る趣旨のものであり、本定時株主総会において、当社提案に係る取締役の選任議案が可決されるか、又は、本株主提案が可決されるかによって、本定時株主総会後の当社の経営陣は全く異なることになります。
駅探側はCEホールディンス側が提案する取締役候補者が、駅探の経営および事業の経験がないことを理由に、取締役としての妥当性がないことを最初に主張しています。
これを踏まえて、駅探の取締役会としては、以下の理由を挙げて本株主提案に反対を表明します
・提案株主が示す新経営陣による当社の経営方針には、具体性・合理性がなく、当社の中期経営計画に定めた成長戦略の継続性が見込まれないこと
・提案株主が提案する経営陣では、提案株主から独立した当社の経営を行うことは難しいこと
・株式会社 TOKAI コミュニケーションズとの業務提携の実現のためには、経営の持続性が望ましいこと
・提案株主が主張する内容には誤り、誤導が多く含まれていること
・現経営陣が検討している施策を実行することにより、当社のコンプライアンス体制は既に向上及び改善が図られており、今後もその継続が見込まれること
ここでは、一つひとつの事実関係についての検証は行いませんが、最後の「当社のコンプライアンス体制は既に向上及び改善が図られており、今後もその継続が見込まれる」という点についての駅探側の説明を見ていきたいと思います。
当社が本定時株主総会で上程予定の取締役選任議案は、従前の、業務執行取締役 4 名及び社外取締役2 名の計 6 名体制を変更し、業務執行取締役 3 名及び社外取締役 4 名の計 7 名(新任の社外取締役候補者 2 名を追加)の候補者により構成されています。
すなわち当社は、今般、外部の専門家のアドバイスも聴取した上で、ガバナンス体制強化の観点から社外取締役が過半数を占める取締役会の構成を採用することとし、その実現のため、当社と特別の利害関係を有しないことを前提として、当社事業に関連する専門性を有すること、労働環境改善・監督、コンプライアンスに関する知見・専門性を有することを条件に、複数の社外取締役候補者と面談を進めてまいりました。
(中略)
本定時株主総会で上程予定の取締役選任議案は、取締役のうち過半数が社外取締役である取締役会構成を採用することで、ガバナンス体制をより強固にし、株主の皆様、とりわけ少数株主の皆様の利益保護及び企業価値向上のための基盤づくりに取り組む当社の方針を明確に打ち出すものと致しました。
(中略)
当社では、東証マザーズ上場会社として実現可能な最高レベルのガバナンス体制と、コンプライアンスの観点からも更に充実した体制を整えるべく、考え得る施策を複数検討し、各施策を実行に移すための具体的な準備を進めているところです。
ガバナンスの強化の観点から、社外取締役が過半数以上となるように取締役会の構成を変える方針であることについては、外形的には従来よりもガバナンスの強化に繋がる施策として意味があると思います(もちろん、どのような人物が社外取締役となるか次第ではありますが)。
しかし、このことをもって、「マザーズ上場会社として実現可能な最高レベルのガバナンス体制」というのはやや大げさですし、実際、取締役会の構成を変えただけでガバナンスの実効性が上がるかというと、それだけでは上がりません。
これに加えて駅探は、CEホールディングスが指摘していた駅探の常勤取締役によるパワハラ事案に関して、以下の通り事実関係について一定程度認めつつ、既に対処済みであることを説明しています。
なお、当社は、提案株主より指摘のあった取締役 1 名によるコンプライアンス違反について、本年 3 月 18 日付けで、当社の社外役員及び外部の弁護士からなる外部調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。そうしたところ、当該調査の実施中に、調査対象の取締役から、同取締役の認識では厳格で公平かつ働きやすい環境を整えるために努力をしてきたものであったものの、コンプライアンス違反の可能性を指摘されたこと自体を重く受け止めており、調査結果の内容如何にかかわらず、本定時株主総会における取締役候補者となることを控える旨の申し出があり、当社としても、当該申し出を踏まえ、同取締役を取締役候補者とはしないこととしています。その後、本年5月 21 日付けで、当該調査に係る調査報告書が提出されました。当該調査報告書においては、調査対象の取締役による言動は、一部、その方法として相当な範囲を超えた部分があり、当該部分についてはパワーハラ
スメントに該当する可能性が相当程度認められる旨の指摘がなされております。一方で提案株主が問擬する具体的なハラスメント行為のいずれもが認定されたわけではないものの、これを受けて、当該取締役からは、一部ハラスメント行為に該当する可能性を指摘されたこと、また、それが本株主提案の理由の一つとされ、当社に混乱が生じていることなどを踏まえ、引継ぎを行った上で辞任したい旨の申し出があり、当該取締役は、当社取締役を辞任しております。
CEホールディングス側の駅探の主張への反論
駅探の取締役会による意見表明を受けて、CEホールディングスは即日反論を行っています。
株式会社駅探に対する株主提案に関する、同社取締役会の意見について
冒頭で、まず駅探側の主張に対しては、事実の1つひとつを争うのではなく、主張の中での主要部分について絞ったうえで、以下のように今回の株主提案に至った最大の理由を改めて説明しています。
1.経営の独立性について
これまで駅探現経営陣が長年独立した経営を行ってきた結果として、事業展開の遅滞と企業価
値の減少、組織運営上の重大な問題が生じており、株主(当社)による経営への参画が必要な事態となりました。その認識を欠いた上で、業務執行取締役が一部(1名)を除き全員重任するという会社提案は、認められるものではありません。
赤字で強調しているように、「駅探の経営をもはや駅探経営陣には任せていられない、自分たちも経営に参画する」というのが、CEホールディングスの立場のようです。これは5月21日に行った株主提案のリリースから一貫して主張しているところです。
また、コーポレートガバナンスやコンプライアンスに関する駅探側の主張については、以下のように厳しく反論をしています。
3.コンプライアンス体制について
駅探が提案する取締役選任案については、候補者の経歴等が明らかになっておりませんが、取
締役会における社外取締役の割合については工夫されたものと認識しています。
しかしながら、「コンプライアンス体制は既に向上及び改善が図られて」いるという主張に妥当性はないと考えます。駅探外部調査委員会により「パワーハラスメントに該当する可能性が相当程度認められる旨の指摘」があった取締役が1名辞任したとのことですが、その他の取締役も、それを長年放置し、善管注意義務を果たしておらず、退任することが妥当です。
今後の決着の行方
以上、5月21日に発表したCEホールディングスの株主提案への駅探の反対表明とそれに対するCEホールディングスの反論についてみてきました。
両社のリリースを見ただけでは、何がどこまで事実なのか、細かいところはわかりません。しかし、株主の立場であれば、結局どちらに経営を任せた方が企業価値が上がりそうかという点が、最も大事であり、結局株主総会でもそこが焦点になるはずです。
今回のCEホールディングスと駅探のケースだけではなく、同様の構図で経営権を争っているのが、コロワイドVS大戸屋ホールディングスです。この他にもアクティビストから株主提案を受けている企業数も昨年並みの件数に上っています。間もなく迎える6月末の株主総会では、経営権を巡る争いについて、注目が集まりそうです。