コーポレート・ガバナンスニュース(2021/2/24)
1.海運大手、脱炭素へ「全速前進」 指針や専門部署
2.米は多様性で先行
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1.海運大手、脱炭素へ「全速前進」 指針や専門部署
【注目ポイント(記事一部引用)】
日本の海運3社が、脱炭素輸送の実現に向けて組織改革を急いでいる。日本郵船は執行役員以上の報酬にESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を組み込むことなどを盛り込んだ行動指針を策定し、商船三井や川崎汽船も4月から専門組織を立ち上げ、二酸化炭素(CO2)を排出しない船の開発などを進める。荷主企業が物流会社を選ぶ基準としても環境対応の重要性は日々高まっており、生き残りの必須戦略となっている。
【コメント】
大手海運3社が、そろって脱炭素に向けた取り組みを本格化しています。背景には、政界的に加速するカーボンニュートラルに向けた投資家・株主の関心の高さと先行する欧米企業の取り組みの強化があり、日本企業もいよいよ対岸の火事では済まされないという危機感の表れといえるでしょう。先日の東京ガスの記事でも触れたように、こうした海外の動きが日本国内にも広がるのは時間の問題で、エネルギー業界や運送業など、特に環境と事業が密接にある企業ほど危機感は強いと思われます。
今回、日本郵船は執行役員以上の報酬にESG関連指標の達成度合いを連動させるとのことですが、脱炭素の取り組みが各社で強化されると、同じように、ESGや脱炭素の取り組み結果を役員報酬に対して反映する動きが、今後のトレンドとなる可能性があります。
2.米は多様性で先行
【注目ポイント(記事一部引用)】
海外における議論は日本の先をゆく。米証券取引所ナスダックは20年12月、同取引所に上場する企業の取締役のうち、少なくとも2人は多様性に配慮した人員にすることを求めると発表した。
【コメント】
ナスダックのこうした取り組みに見られるように、欧米のビジネス社会では、多様性の確保は、「Nice to have」ではなく「Must have」へと急速に変化しています。取締役会の多様性を示すものとして、取締役の要件を明示した「スキルマトリックス」があります。日本企業の開示例では、「性別」、「専門性」、「キャリバックグラウンド」、「職業」などの属性を開示するケースが多いのですが、欧米企業の開示例では、こうしたことに加え、「国籍」、「出身地域(北米、南米、東南アジア、アフリカetc)」、「人種」、「取締役としての在任年数」、「業界に関する専門性」なども含まれるのが一般的であり、特定の属性への偏りや空白がないように、取締役を対象にしたサクセッションプランの中で検討を行っています。
「多様性の確保」が企業価値に必ずプラスになるかといえば、そうした因果関係の照明は困難だと思いますが、一方で、持続的な成長を遂げようとする、単一的な価値観ではなく多様性を備えていることが、必要になってきます。次期コーポレートガバナンスコードの改訂では、スキルマトリックスの開示が盛り込まれる予定ですが、こうしたこときっかけに、多様性の確保が当たり前化することを期待しています。