コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/25)
本日は、以下の6つの記事について取り上げます。
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駅探、大株主のCEHDの人事案受け入れ 社長退任へ
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大戸屋HD株主総会、コロワイドの役員提案を否決
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武田、全役員の報酬開示 ウェバー社長、19年度20億円
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ルロワ元副社長への報酬12億円 トヨタ
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「物言う株主」バリューアクト創業者、インパクト投資に軸足
- 物言う株主のオアシス「コロナ下、株主提案は控えめにしている」
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1.駅探、大株主のCEHDの人事案受け入れ 社長退任へ
【注目ポイント(記事一部引用)】
駅探は24日、29日に開く定時株主総会にはかる予定だった取締役と補欠監査役の選任議案(会社提案)を取り下げると発表した。筆頭株主のCEホールディングス(HD)による全取締役の解任を求める提案に反対していたが、他の株主から十分な賛同が得られなかったという。CEHDが提案する新たな取締役と補欠監査役の選任議案が可決する見通しとなり、中村太郎社長は退任する。
【コメント】
大株主であるCEホールディンスから全取締役の交代要求を受けていた駅探ですが、株主総会で敗北が決定、中村現社長は退任することが発表されました。ISSが会社側提案に賛成推奨していたこともあり、勝敗の行方が注目されていた本件ですが、一先ず今後はCEホールディンス出身の新社長(就任予定)のもと、成長戦略の練り直しを急ぐことになりそうです。
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2.大戸屋HD株主総会、コロワイドの役員提案を否決
【注目ポイント(記事一部引用)】
定食店チェーンの大戸屋ホールディングスが25日午前に開いた株主総会で、株式の19%を持つ筆頭株主の外食大手コロワイドが提案していた取締役候補の議案が否決された。大戸屋HD側が出した現経営陣を中心とした役員案を可決した。人手不足や新型コロナウイルスの流行によって業績が落ち込んでいるなか、窪田健一社長らが引き続き再建を指揮する。
【コメント】
筆頭株主のコロワイドと取締役の選任や店舗運営方法等を巡って対立していた大戸屋ですが、株主総会では大戸屋側の提案に賛成票が集まり、勝利しました。気になる今後ですが、コロワイド側の動き次第によって展開が大きく変わりそうです。各種の報道によると、コロワイド側は株主総会で負けた場合には、敵対的TOBも辞さない構えとあります。しかし、そうなるとコロワイドが嫌がる大戸屋をむりやり従えようとしているというイメージが益々強調され、世論の支持は集まりそうにありません。とはいっても、敵対的TOBである程度のプレミアムを乗せた条件を突き付けられた場合、今回大戸屋側に賛成した多くの個人株主の中には、態度を変える人も少なくなく、敵対TOBを行った場合のコロワイドの勝算はある程度見込めるでしょう。居酒屋離れが既に水面下で始まっていると考えられますが、昨今ワタミをはじめ、居酒屋業態は他業態への進出・転換を急いでいます。コロワイドにとって大戸屋は脱居酒屋業態として今後のコア事業と位置づけることもできそうです。このままコロワイドが静観するとは考えづらく、今後何らかの動きは遠からず起きるのではないかと予想しています。
3.武田、全役員の報酬開示 ウェバー社長、19年度20億円
【注目ポイント(記事一部引用)】
武田薬品工業は24日に公表した有価証券報告書の中で、すべての取締役を対象に役員報酬を開示した。対象は社外取締役も含めた16人。全役員の個別開示は同社として初めて。クリストフ・ウェバー社長の2019年度の役員報酬は20億7300万円と前年度から18%増えたこともわかった。
【コメント】
関西電力のように企業不祥事が発生したために、対外的なアピールも含めて役員報酬の個別情報開示に踏み切る企業はありましたが、武田が自ら積極的に情報開示に動いた点は非常に高く評価されるべきと思います。報道では、透明性の確保という観点が情報開示の理由として挙げられていますが、それ以外にもグローバルレベルのヘルスケア企業として成長していくために、特に海外の株主・投資家に向けて他の海外企業と同様の情報開示姿勢を示したかったとも考えられそうです。これを機に、他企業でも個別情報開示が進むことを期待しています。
4.ルロワ元副社長への報酬12億円 トヨタ
【注目ポイント(記事一部引用)】
トヨタ自動車が24日に公表した2020年3月期の有価証券報告書によると、役員報酬が最も多かったのは6月に取締役を退任したディディエ・ルロワ元副社長の12億3900万円だった。18年3月期から3年連続で10億円を超えた。
【コメント】
世界最大の自動車会社でありながら、役員報酬水準が他のグローバルの自動車企業と比べると格段に低いトヨタですが、直近の発表で10億円以上の報酬額を超える役員が出ました。役員報酬額の適正さというのは、必ずしも他社水準で決めるべきものではありませんし、もちろん高いから良いという訳ではありません。しかし、トヨタのように、単純に自動車業界内だけでの競争ではなく、CASEに代表されるようにGoogleなどのIT企業などを含め、異業種との競争も激化している状況では、世界最高レベルの人材を惹きつけるために報酬水準を上げていかざるを得ないでしょう。世界的な会社になりながら、長年、三河の田舎企業と自称し、役員報酬額の低さを誇っていたようなトヨタ自動車において、役員報酬額が上がっているということは、それだけ苛烈な競争を繰り広げている証左ともいえそうです。
5.「物言う株主」バリューアクト創業者、インパクト投資に軸足
【コメント】
バリューアクト・キャピタルの創業者が、インパクト投資を推進する新ファンドを立ち上げるというニュースです。バリューアクトのこれまでの投資スタイルが創業者の思想を強く反映していると考えると、新ファンドは「ステークホルダー主義」を重視したチャリティーファンドではなく、記事の中で米国の企業法務の弁護士がコメントしているように、「ESGを重視する、新しいタイプのアクティビスト」とみるのが正しい認識のように思います。
6. 物言う株主のオアシス「コロナ下、株主提案は控えめにしている」
【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルスのまん延という異常事態のなか、3月期決算企業が株主総会のシーズンを迎えた。ここ数年、活動が目立ってきたアクティビスト(物言う株主)たちは、コロナ下でどう動いているのか。今年も複数の企業に株主提案をしている香港オアシス・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者に話を聞いた。
【コメント】
今年の株主総会におけるアクティビストの株主提案件数は過去最高件数となりました。中でも、例年に比べて、いわゆる株主還元策型からガバナンス改善型へと提案内容が変化している点が大きな特徴です。特に取締役の選任を巡っては会社側とアクティビスト側で対立するケースが目立ちます。インタビューの中で、セス・フィッシャー氏も述べているように、社外取締役が健全なコーポレートガバナンスの実現に必要不可欠という観点に立つと、社外取締役の独立性やその人材要件について、今後益々注目が集まると考えられます。