コーポレート・ガバナンスニュース(2021/2/19)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.取締役会の多様性、脱形式主義へ問われる本気度

2.トップ選任基準の可視化を

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1.取締役会の多様性、脱形式主義へ問われる本気度

【注目ポイント(記事一部引用)】
今春に東京証券取引所と金融庁が改訂を予定するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)。社外取締役の導入拡大など経営へのさらなる多様性確保が求められる見込みだが、問われているのは厳しくなる形式要件をクリアすることではなく、取締役会の実質的な機能強化だ。課題に取り組む企業の先進例を探った。

【コメント】
取締役会が本来期待される機能を果たしているかどうかを、実効性評価を活用して確認していくのは良いことだと思いますが、そもそも多くの企業において、「取締役会がどのような場であるべきか」について、取締役の中でも認識がバラバラであるという問題があります。

例えば、多くの企業の取締役会をみていると、取り上げられる議題には、決議事項もあれば、報告事項もあれば、情報共有もあれば、雑談に近いような意見交換もあれば・・・とその時々に応じて、良く言えば自由度が高く、悪く言えば目的が明確でないまま、議事運営がなされていることがまだまだ多く見受けられます。

ある企業の取締役会の実効性評価に携わった際、その企業の取締役会議長とCEOは、「取締役会の場を戦略を議論する場」に変えていきたいという意思が明確でした。その改革のために、まず行ったのは、議題の整理であり、業務執行の進捗状況の報告や情報の共有、執行サイドで意思決定するべき決議事項などは別の会議体で取り扱うことにして、取締役会では、短期および中長期の経営の在り方や事業戦略に関する議題にだけ極力絞り込むように議題の基準を明確にし、その議論に必要な時間配分を確保することから始めました。

このように本来は、取締役会をどのような場にするかという方針を明確にすることが取締役会の実効性の強化には欠かせません。もちろん、方針を明確にした後には、取締役としてどのような人材が必要になるのかという「取締役に求める人材要件」を明確にすることや、「要件を満たす候補者を探すこと」も続いて検討する必要がありますが、出発点は「取締役会の目指すべき姿の明確化」からだと思います。

 

2.トップ選任基準の可視化を

【注目ポイント(記事一部引用)】
東京五輪・パラリンピック組織委員会を巡る出来事は、多様性の問題とともにガバナンスに関する最も重要な論点を世間に知らしめた。トップの選任・解任の問題である。

【コメント】
この記事で指摘されているように、どのような組織・団体であってもトップの選解任においては、後継者に求められる資質や能力といった「人材要件」が全ての核となります。

今回の東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長の選任を巡っては、まず会長は、組織委員会の理事であることが必要でしたが、そうすると会長の候補者になり得る理事の選任基準の中にも、本来は会長の選任要件に近いものが入っていることが必要だったはずです。

これは企業でいえば、CEOを取締役や執行役員から選任するとした場合に、取締役や執行役員の要件の中にはCEOに期待される要件が(少なくとも一部は)入っている必要があるということと同じなので、当たり前といえば当たり前の話ではあります。

森前会長の辞任報道後に、選任に向けた透明性や客観性がクローズアップされたため、にわかに会長の選任基準を取り繕うはめになりましたが、日本企業の中で、この状況をみて、うちは大丈夫と言い切れる企業がどの程度あるでしょうか。

少なくとも後継者計画に際して、CEOの後継者の人材要件が明確でない企業、また人材要件に沿って候補者の選定や育成に取り組めていない企業は、まずは候補者に求める要件を明確にすることから、はじめる必要があります。