コーポレート・ガバナンスニュース(2021/2/1)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.米エクソン、設備投資削減と取締役刷新を検討

2.1部復帰で節目の東芝、変わるか「物言う株主」との関係

3.存在感増す旧村上ファンド、自社株買いや対抗TOB駆使する手法健在

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1.米エクソン、設備投資削減と取締役刷新を検討

【注目ポイント(記事一部引用)】
「スーパーメジャー」と呼ばれる米石油大手エクソンモービルは、同社に事業再編を求めて委任状争奪戦に乗り出したアクティビスト(物言う投資家)との協議の末、設備投資のさらなる削減と取締役会の刷新、持続可能な技術への投資拡大を検討している。

【コメント】
石油大手のエクソンモービルが、大株主であるアクティビストtの協議によって、取締役会の刷新を検討していると報じられています。全世界的に脱炭素社会の実現に向けて企業の経営への圧力が強まる中で、特に旧来型のエネルギー企業は事業の在り方を大幅に変えていく必要があります。こうした動きに乗り遅れる企業は、ダイベストメントに見られるように、株式市場における評価は下がることが必至です。

こうした外部ステークホルダーからの厳しい要求を突き付けられる可能性があるのは、なにも欧米のエネルギー企業だけではなく、当然日本のエネルギー企業にもあります。エクソンモービルで起きていることと同じことが、日系エネルギー企業にも生じることは時間の問題と思われるのですが、こうした将来への課題への対処を十分に行えている企業は、現時点ではまだないようです。

 

2.1部復帰で節目の東芝、変わるか「物言う株主」との関係

【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝は29日、東京証券取引所第2部から第1部に復帰し、経営再建はひとつの節目を迎えた。ただ、その再建途上で経営を取り巻く環境は大きく変わった。特に株主構成の変化による影響は顕著で、資本増強により加わった「物言う株主」との緊張関係が続いている。社内には1部復帰により株主構成が変わることに期待する見方もある。東芝が経営戦略や株主との関係を磨いていく転機となるのか。

【コメント】
東芝の大株主には、昨年の株主総会で取締役選任を巡って委任状争奪戦に発展したエフィッシモだけでなく、昨年12月に臨時株主総会の開催を求めることを表明したファラロンなど、依然としてアクティビストが複数名を連ねています。

アクティビストの主張としては、①東芝ネクストプランで提示している、成長の実現を結果で示すこと、②昨年グループ会社で発生した不正取引などが再発しないように、ガバナンスを強化すること、③株主還元の強化が主なところです。

車谷CEOはこの4月に就任から3年間が経過します。この間、半導体メモリー事業の売却など構造改革が行われ、利益も出てはいますが、5か年計画である東芝ネクストプランの達成には現状まだ遠いのが実状です。今後もアクティビストの強いプレッシャーを受けながら高成長を実現する、難しい経営の舵取りが求められます。

 

3.存在感増す旧村上ファンド、自社株買いや対抗TOB駆使する手法健在

【注目ポイント(記事一部引用)】
「物言う株主」村上世彰氏が実質的に率いる旧村上ファンド系投資会社が存在感を増してきた。株式保有する企業から自社株買いを引き出したり、株式公開買い付け(TOB)価格が割安とみれば途中から参戦したりと、その手法は健在だ。足元では建設業界の株式買い集めによる業界再編を仕掛ける可能性も指摘されている。

【コメント】
旧村上ファンド系の投資会社の投資スタイルの特徴の一つに、業界再編を仕掛けやすい業界を選別し、そのうちの幾つかの企業に集中的に投資することが挙げられます。記事にもある、建設業界はその典型です。

他に注力していると見られるのが、半導体商社です。こちらについては既にMBOを行って上場廃止となっている黒田電気をはじめ、複数の企業に現在も投資しています。半導体商社は上場企業の数が多いものの、仕入れ先・売り先企業ともに統合が進み需要に対して明らかにプレイヤーの数が多く、長らく再編の必要性が指摘されている業界です。

旧村上ファンド系の投資会社は、黒田電気のMBOで一定の成功を得ていることもあり、いずれかのタイミングで、ターゲットを絞り込み、一気呵成に企業の経営陣・取締役会にプレッシャーを掛けてくる可能性があります。

こうした事態に備えることを目的とした買収防衛策は、現在は廃止することがトレンドになっていますが、特にアクティビストのターゲットにされかねない業界の企業は、経営陣の保身ではなく、企業価値の防衛のためという説明が成り立つのであれば、導入を検討すべきだと思います。

くれぐれも無防備に買収防衛策を廃止をして、その直後に村上ファンド系の投資会社に30%以上の株式を取得され、結果的に役員の受け入れまで発展した、川崎汽船と同じ轍を踏まないように注意する必要があります。