コーポレート・ガバナンスニュース(2021/1/12)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.車谷社長「東芝は総合電機ではなくデータカンパニーになる」

2.買収防衛策、王道にあらず

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1.車谷社長「東芝は総合電機ではなくデータカンパニーになる」

【注目ポイント(記事一部引用)】
CPS(サイバー・フィジカル・システム)テクノロジーカンパニーという新しい事業モデルを目指す東芝。主導するのが、2018年4月に同社CEO(最高経営責任者)に就任した車谷暢昭氏だ。新刊『スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX』(島田太郎、尾原和啓著)でインタビューに応じた車谷氏が、東芝のビジョンを語る。

【コメント】
「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉がコロナ禍によって、図らずも大きな注目を集め、また日本企業の最大の課題として捉えられていますが、車谷氏のインタビューにあるように、デジタルの文脈の中で自社のビジネスを再定義し、ビジネスモデルの在り方自体を変えていくという本来のDXの持つダイミナックさの実現に取り組めている企業はまだまだ少ないのが現状です。一方、ただでさえこの分野で先行している海外企業は更にDXを促進させており、日本企業が本格的にDXに取り組むには一刻の猶予もありません。
DXの推進は企業の抜本的な構造改革に他ならず、最重要経営マターであることに異論はないでしょう。だとすると、本来的には取締役会での戦略の議論もDXの推進をどのように実現していくか、さらには経営陣の評価や報酬にもDXの推進とその実現度合いを反映させていくことが求められます。

2.買収防衛策、王道にあらず

【注目ポイント(記事一部引用)】
日本で敵対的買収やもの言う株主が増えていることもあり、有事になれば買収防衛策を導入する機運が高まっている。だが、緊急事態を理由に、安易に導入することには慎重であるべきだ。

【コメント】
2015年のコーポレートガバナンスコードの適用開始後、多くの企業で買収防衛策を廃止する動きが相次ぎました。昨年はコロワイドによる大戸屋の買収、一昨年は伊藤忠商事によるデサントの買収など、近年は敵対的買収も増えていること、更にはアクティビストファンドの台頭などもあり買収防衛策を再検討する向きもあるようです。

一般論として、企業経営者が自社の潜在的な企業価値を発揮できていないと株主/投資家が認識する場合、敵対的買収の機運は高まります。敵対的買収は、経営者側からすると(同意がない買収行為のため)敵対行為と捉えられますが、コーポレートガバナンスの観点で考えると、経営者の自己保身を抑制し、企業価値を高めるための行動をより促す効果が期待できます。

従来、日本企業の経営者は不祥事以外の理由で任期途中に解任されることは、ほとんどありませんでした。そのため、著しく業績が低迷していながら何年も経営者として居座るケースや、抜本的な改革を行う必要がありながら現状維持を狙い、必要な手を打たない経営者の存在が当たり前のように許されてきました。経営者の交代メカニズムが機能しないことが、日本企業の長期低迷の原因の一つとなったのは紛れもない事実です。こうした現状を変えるために、コーポレートガバナンスコードでは買収防衛策を経営陣や取締役会の保身のために導入してはならないと定めています。

買収防衛策の導入を行うか否かの妥当性を検証する観点においては、取締役会でどのような議論を行ったかを是非丁寧に株主/投資家に説明するべきだと筆者は考えます。特に経営陣とは異なる立場にいる独立社外取締役は、より高い独立性を備えた立場にあるからこそ、説明責任を果たす義務は大きくなるはずです。

 

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