コーポレート・ガバナンスニュース(2020/10/13)

本日は、以下の記事について取り上げます。

1.SHIFT、好決算と新幹部を好感 上場来高値を更新

※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します

 

1.SHIFT、好決算と新幹部を好感 上場来高値を更新

【注目ポイント(記事一部引用)】
9日の東京株式市場でソフトウエアの品質保証を手掛けるSHIFTの株価が急伸した。一時前日比3000円(19%)高の1万9070円まで上昇。株式分割考慮後ベースの上場来高値を更新した。前日の取引終了後に発表した2020年8月期の連結純利益は前の期比70%増の16億円と目標を上回る着地。キーエンス元社長が副社長に就任する人事も発表され、成長期待が高まっている。

【コメント】
先週の記事ですが、ソフトウェアの品質保証を行うSHIFTがキーエンス元社長の佐々木道夫氏を副社長に就任する人事を発表しました。社長経験者をNO2のポジションで外部から招聘することは日本企業では決して多くありませんが、それに加えて佐々木氏が元々SHIFTの社外取締役を務めていたことにも注目が集まります。

日本ではまだそれほど数は多くありませんが、海外企業では有力なCEO候補(またはそれに準ずる経営幹部候補)をまず社外取締役に選任し、時期をみて執行側の幹部に登用するということが度々発生します。

有名なところでは、イギリスのDanaherのCEOであったLasrence Culpが2018年2月にGEの社外取締役に選任され、その年の10月にJohn Flanneryの後を継いで新CEOに就任しました。このときFlanneryはGEのCEOをわずか1年で退任したことで話題を集めましたが、GEの取締役会はFlanneryが急遽退任せざるをえない事態に対応するため、FlanneryがCEOに就任したわずか半年後、後任CEOの有力な候補者としてCulpを社外取締役に就任させたのだろうといわれています。なお、同時期にもう1名、American AirlinesのCEOを務めたThomas Hortonも社外取締役に就任されていますが、HortonもCEOの有力候補者の一人だったとみることができます(Hortonは後にGEのLead Directorに就任)。恐るべき、深謀遠慮です。緊急時のCEOサクセッションプラン(後継者計画)として、ここまで用意周到に取締役会が準備を進めていたという事例を私は他に知りません。

SHIFTの件に戻ると、今回の人事は佐々木氏を副社長に就任させたことに留まらず、一定期間後、社長への登用の可能性もあり得ると思われます。現社長の丹下氏は創業者として同社の設立から東証1部上場への上場と成長を牽引してきました。年齢も46歳と若く、まだまだ第一線で活躍される可能性は十分高いと思いますが、今後の成長を見据えて後任に託すというシナリオも描いているのかもしれません。佐々木氏は、キーエンス創業者である滝崎氏の後任として44歳でキーエンスの社長に就任し、10年間同社の経営を担ってきました。創業者からの経営の継承経験もあるという点は、丹下氏の後任CEOとして重要な人材要件を満たしているとも考えられます。