コーポレート・ガバナンスニュース(2020/9/25)

本日は、以下の2つの記事について取り上げます。

  1. 企業統治の根幹に疑義 議決権不適切集計
  2. 「物言う」ペルツ氏、コムキャストに照準

※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します

 

1.企業統治の根幹に疑義 議決権不適切集計

【注目ポイント(記事一部引用)】
信託銀行による議決権の不適切な集計は、上場企業の約3割に及ぶ事態となった。日本の株主総会の運営に疑義を投げかけており、三井住友信託銀行幹部は24日の会見で「資本市場の参加者に迷惑をかけた」と述べた。総会時期の過度な集中がもたらす弊害を放置してきた結果、投資家に不利益をもたらしている。総会は企業統治の根幹で、分散や電子化が急務だ。

【コメント】
東芝の株主からの指摘で発覚した議決権の不適切集計については、三井住友信託銀行だけでなく、みずほ信託銀行でも同様の問題が発覚しました。株主総会を巡っては、コロナ禍におけるオンライン開催が呼びかけられていたにもかかわらず、海外と比べるとその実施率は極めて低いものでした。また、記事が指摘する通り、今回の問題の原因の一つには議決権行使を郵便に頼る、従来型のアナログな方法も起因していることは間違いありません。新たに誕生した菅政権では、デジタル庁の創設をはじめ行政のデジタル化を急速に進めようとしていますが、民間についてもその対象を拡大し、オンライン株主総会の開催とオンラインでの議決権行使が広がることを期待しています。

 

2.「物言う」ペルツ氏、コムキャストに照準

【注目ポイント(記事一部引用)】
著名アクティビスト(物言う株主)のネルソン・ペルツ氏は、日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、飲料・食品大手ペプシコ、ゼネラル・エレクトリック(GE)、化学大手デュポンなど米巨大企業と対立してきたことで知られる。

【コメント】
日本のアクティビストとしては村上世彰氏が有名ですが、海外ではネルソン・ペルツ氏、ダニエル・ローブ氏などが有名です。彼らに共通しているのは、村上氏であれば東京スタイルや阪神・阪急ホールディングス、ペルツ氏はGEやP&G、ローブ氏はYahooやソニーといった大企業を相手にしたアクティビスト活動で一定の成果を得てきたことです。現在のアクティビストは、過去の「ハゲタカファンド」のように対象企業の株の過半数を取得するようなことはせず、多くの場合、大企業を投資対象に絞り、保有比率もせいぜい数%程度(それでも数百億円以上ですが)となっています。アクティビストとしては、市場の注目度を集める意味だけでなく、大企業の方が経営改善余地が高いこともあり、近年では投資対象企業をより一層大企業に絞る傾向が強まっているようです。日本でも東芝をはじめアクティビストが大株主となっている大企業が既に存在しますが、今後これまで以上にそうした企業は増えてくるでしょう。