コーポレート・ガバナンスニュース(2020/7/29)
本日は、以下の3つの記事について取り上げます。
- 上場子会社の社外取締役 「3分の1以上」5割止まり
- JDI社長、取締役から外れる 執行と監督を分離
- 東芝、見えない「出口」 物言う株主となお苦闘
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1.上場子会社の社外取締役 「3分の1以上」5割止まり
【注目ポイント(記事一部引用)】
企業統治(コーポレートガバナンス)で、上場子会社の取締役会に焦点が当たっている。親会社ではなく一般株主の利益を重視するよう取締役会の独立性が求められている。野村資本市場研究所が上場子会社の取締役構成を調べたところ、社外取締役の割合が多くの投資家が求める3分の1以上の企業は5割にとどまることがわかった。
【コメント】
上場子会社に対するコーポレートガバナンスは、コーポレートガバナンスコードだけでなく、2019年6月に経産省が発表した『グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針』にある「上場子会社に関するガバナンスの在り方」で、あるべき体制が記載されています。上場子会社のガバナンスにとっては親会社からの独立性の担保が最も重要なテーマですが、その取り組みを担保するための1つの方策として、取締役会における社外取締役比率を高めることがあります。実際に実務指針でも社外取締役比率を高めることを目指すことが基本であるとして、1/3以上や過半数以上と具体的な目安も記載があります。今回の調査結果からは、まだまだその取り組みが道半ばであることを表しています。社外取締役になり得る人材の絶対的な数の不足という要因もありますが、まだまだ上場子会社自体の意識が親会社に向いており、取り組みが遅れているということがこうした現状の原因と思えます。
2.JDI社長、取締役から外れる 執行と監督を分離
【注目ポイント(記事一部引用)】
経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は27日、菊岡稔社長が取締役を外れると発表した。代表権を持つ執行役社長として業務執行に専念する。同社は在庫の過大計上などによる不適切会計が発覚、企業統治体制の強化が課題となっていた。経営の執行と監督を切り分け、信頼回復に努める。
【コメント】
経営の執行と監督の分離を強化するためとして、菊岡社長が取締役を外れるようですが、実際にこれまで取締役会に出席し、執行の長の立場で意思決定に関与していた社長が外れることで、取締役会の意思決定や経営のスピードに影響が出ないかどうか懸念します。海外企業をみても、CEOが取締役を兼務することは一般的ですし、むしろCEOが取締役会に出ないことで、他の取締役(ほとんどが社外取締役)からするとCEOの動きが見えづらくなる、マイナス面の影響の方が大きくなる可能性はあります。
3.東芝、見えない「出口」 物言う株主となお苦闘
【注目ポイント(記事一部引用)】
東芝が31日に株主総会を開く。筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントがガバナンス強化のために取締役3人を追加で受け入れるよう求める株主提案を出している。水面下で提案が出ないように必死の調整を続けてきた東芝。対立の背景には、業績そのものだけでなく、新型コロナウイルスが東芝の株主対策をも揺るがした実態があった。
【コメント】
東芝の取締役選任を巡る、アクティビストと会社側とのやりとりの一連の経緯をまとめた記事として論点が明確でわかりやすい内容です。ところで、31日の株主総会の勝敗ラインはどこになるでしょうか。もちろん、エフィッシモが推す3名の取締役選任の結果次第ではありますが、記事でも触れているように車谷CEOの取締役選任への賛否にも注目が集まるはずです。恐らく車谷CEOが取締役選任を否決されることはないと思いますが、問題はそこではなく賛成がどの程度かです。現在アクティビスト3社の保有比率が25%となっているため、賛成が7割程度となる可能性は十分あります。仮に賛成が6割程度またはそれを下回った場合、今後の経営には何らか影響が出る可能性があります。